ゴマダラカミキリ White-spotted Longicorn Beetle
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草地のイタドリの群落にゴマダラカミキリがたくさんいました.ゴマダラカミキリの新鮮な個体は,顔,脚,体に青白い毛が密生していて,体が蒼白いというか薄青いきれいな色をしていますね.
イタドリは成虫が後食をしているのかなと思っていたのですが,参考8によると,ゴマダラカミキリの幼虫は,多年生草本であるイタドリを食べるとのことなので,どうやらここで幼虫が育って成虫になっているようです.
葉上や茎などに活発に移動している個体がたくさんいました.
外来種のツヤハダゴマダラカミキリとの区別は,ゴマダラカミキリでは翅の前部に小さな顆粒状の突起がびっしりあるので翅の前部がザラザラしていますが,ツヤハダゴマダラカミキリはこれがなく,翅がすべすべしているのでツヤハダの名前がついています.他にはゴマダラの前胸背に1対の白斑があることと小楯板が白いですが,ツヤハダは前胸背の白斑はなく,小楯板には白い毛がありません(参考7).自分はまだ園内でツヤハダゴマダラカミキリに出会ったことはありません.
基本情報
- 和名
- ゴマダラカミキリ
- 分類
- 節足動物門 昆虫綱 コウチュウ目 カミキリムシ科 フトカミキリ亜科 Monochamini 族 ゴマダラカミキリ属 (Anoplophora)
- 英名
- White-spotted Longicorn Beetle
- 学名
- Anoplophora malasiaca (Thomson, 1865)
- 状況
- IUCN/ISSG 世界の侵略的外来種:侵略的外来種(ヨーロッパ,米国),原産(日本,中国,香港,マカオ,ベトナム,ミャンマー) (参考1)(ただし,Anoplophora chinensis として.詳細は本文を参照)
写真とメモ
草地のクズにいました.ゴマダラカミキリの幼虫が食べる木のメニューにクズは含まれていませんが,成虫になってから葉を食べている(後食)のかもしれません.
最近は,ゴマダラカミキリの近縁種で欧米で侵略的外来種として知られるツヤハダゴマダラカミキリが日本に侵入しているのが問題になっているようです(参考7).ツヤハダゴマダラカミキリとゴマダラカミキリとのわかりやすい区別点は,ゴマダラカミキリには頭部に続く前胸の背面に1対の白い紋がありますが,ツヤハダゴマダラカミキリにはそれがない点です.
木の幹を高速で移動中のゴマダラカミキリを発見.ちょっと足と体がぶれてます.
飛んできてサクラ(ソメイヨシノ)の幹に止まったところです.活発に動いているところなのでブレてます.前胸背の白斑がよく見えませんが、翅の前部に細かい粒々がびっしり見えるので,外来種のツヤハダゴマダラカミキリではなさそう.
以前ゴマダラカミキリの写真が撮れた場所とほとんど同じ場所なのですが,このあたりに幼虫の好きな木が多いのでしょうか.Wikipediaによると,「ミカン類,ヤナギ類,クリ,クワ,イチジク,プラタナスなど多岐にわたる」とあります.ヤナギやクリ,クワなどなら園内のどこにでも多そうですが…
この日は,ゴマダラカミキリが飛んでいるところを何度か見ました.目で追いかけていってムラサキツメクサ畑に着地したところを撮影.都会でもいる普通種ですが,大型のカミキリは写真を拡大してみると迫力があります.
ゴマダラカミキリと侵略的外来種として国際的に有名な近縁種の分類について
日本では,ゴマダラカミキリは柑橘類の重要な害虫とされていますが(参考3),ゴマダラカミキリの近縁種には,海外でかなり被害を出している別の種類がいて,警戒されているようです.下の表に,そのうちの3種類の学名,英名,和名の関係をまとめてみました(以前書いた内容はそのあたりが混乱していましたので,修正しました).日本のゴマダラカミキリと他の2種の取り扱いが混乱している場合があり,ちょっとややこしいです.
学名 | 一般名 | 分布・備考 |
---|---|---|
Anoplophora malasiaca | ゴマダラカミキリ White-spotted Longicorn Beetle | 日本,韓国,北朝鮮,台湾 |
Anoplophora chinensis | (和名はないので,このページではキネンシス種と呼ぶ) Citrus Long-horned Beetle Black and White Citrus Longhorn | 中国,韓国,ベトナム,ミャンマー,マレーシア(日本の在来種ではない) ※ 海外で侵略的外来種(参考1) |
Anoplophora glabripennis | ツヤハダゴマダラカミキリ Asian Long-horned Beetle | 中国,韓国,北朝鮮(日本の在来種ではない) ※ 海外で侵略的外来種(参考2) |
- ゴマダラカミキリとキネンシス種との関係
- ゴマダラカミキリは,日本の資料では A. malasiaca (マラシアカ種)として扱われているようですが,国際的には,中国などの大陸に分布していて,日本にはいないキネンシス種(A. chinensis,和名がないのでこの呼び名にします)と同一の種類として扱われている場合があるようです(少なくとも,かつてまとめて1種類として扱う分類が主流だったようで,現在でもそうしている資料も多いです).その場合の学名は,日本のゴマダラカミキリも含めて,A. chinensis となります.たとえば,参考1では,侵略的外来種として A. chinensis が登録されているのですが,そのページでは日本名「ゴマダラカミキリ」やその学名 A. malasiaca がそのシノニム(同じ種類に対する別名)として扱われています.このことを踏まえて,他の資料を読む必要がありそうです.Wikipedia 英語版では,A. chinensis の項目の説明が日本のゴマダラカミキリも含むように書かれており,日本にも分布するとなっています(参考5).
- 一方,最近の資料では別種として扱われていました(参考4).参考4によると,北米で侵略的外来種として問題になっているのは,キネンシス種(A. chinensis)のほうで,日本のゴマダラカミキリではありません.別種として扱うのが妥当かどうかは自分には判断できませんが,別種として扱うほうが日本語の多くの資料とは合うので,上の表では,これらを別種としています.
- ゴマダラカミキリとツヤハダゴマダラカミキリとの関係
- ツヤハダゴマダラカミキリ(A. glabripennis,グラブリペニス種)についても混乱している場合があります.参考6には,ツヤハダゴマダラカミキリが日本に分布すると書かれています.ただ,こちらの場合は,同一種とする考え方が主流だったわけではないようなので,分類の考え方の違いというよりは,単なる間違いなのではないかなと思っています.北米などでは侵略的外来種としては,おそらくツヤハダゴマダラカミキリが最も有名で,他の種類も巻き込まれてしまっているような感じ.
いずれにしても,日本のゴマダラカミキリが,現時点では侵略的外来種として問題になっている種類ではないからといっても,これらの種類は外見がそっくりで,性質もよく似ている近縁種ですから,警戒するならすべてに警戒するのは妥当だと思いますが,濡れ衣っぽくてちょっとすっきりしません(笑).
参考
- Global Invasive Species Database (2018) Species profile: Anoplophora chinensis. Downloaded from http://www.iucngisd.org/gisd/species.php?sc=1404 on 20-07-2018.
- Global Invasive Species Database (2018) Species profile: Anoplophora glabripennis. Downloaded from http://www.iucngisd.org/gisd/species.php?sc=111 on 20-07-2018.
- ゴマダラカミキリ. “有田病害虫図鑑(有田みかんデータベース)”. http://www.mikan.gr.jp/byocyu/gaichu/kamikiri/index.html, (参照 2024-07-13).
- Anoplophora chinensis(ANOLCN): distribution. In "EPPO Global Database". Retrieved from https://gd.eppo.int/taxon/ANOLCN/distribution on 2024-07-13.
- Citrus long-horned beetle (22 March 2018, 14:27 UTC) In Wikipedia: The Free Encyclopedia. Retrieved from http://en.wikipedia.org/wiki/Anoplophora_chinensis.
- Asian long-horned beetle (23 March 2018, 05:01 UTC) In Wikipedia: The Free Encyclopedia. Retrieved from http://en.wikipedia.org/wiki/Asian_long-horned_beetle.
- ツヤハダゴマダラカミキリに御注意ください(掲載日:2022年7月14日). “埼玉県”. https://www.pref.saitama.lg.jp/a0907/tuyahadakamikiri.html, (参照 2023-06-24).
- 深谷 他:イタドリから発生したゴマダラカミキリ成虫の配偶定位における多種情報利用. 日本応用動物昆虫学会大会講演要旨集 64:96. 2020年02月28日. https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202002244767364532
- . “”. , (参照 ).
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