ラクウショウ Bald Cypress
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ラクウショウの林冠を双眼鏡で見ると,たくさんの花穂ができていました.以前,晩秋に撮影した穂よりもかなりモコモコして太いので,つぼみがふくらんできているようです.花の時期は葉が出はじめるのと同じ3~5月頃とのことなので,もう少しで咲く時期になるものと思います,
低い枝には花穂がついていなかったので,近くから見えません.ラクウショウは雌雄同株で,ぶら下がっているのが雄花,その根元側に小さい雌花があるそうですが,解像度の限界で確認できず.
基本情報
- 和名
- ラクウショウ
- 分類
- 裸子植物類 マツ綱 マツ目 ヒノキ科 ヌマスギ属 (Taxodium)
- 英名
- Bald Cypress
- 学名
- Taxodium distichum (L.) Rich.
- 状況
- IUCN レッドリスト 2023-1:[LC] Least Concern (絶滅のおそれなし) ver 3.1, Pop. trend stable (個体数動向安定) (参考1)
写真とメモ
メタセコイアとポンドサイプレスの木につぼみができているのを見つけたので,ラクウショウにもできているはず… と探し回ってみたのですが,なかなか見つかりませんでした.つぼみはどの枝にもできているわけではなく,日のよく当たる,勢いのある枝にだけついています.必然的に写真の撮りやすい下の方の枝にはつぼみがなかなかありません.結局,みつかったのはかなり遠い上の方の枝でしたので,こんな写真になりました.ポンドサイプレスのつぼみとはそっくりの印象です.ポンドサイプレスはラクウショウの変種で,葉の形はかなり違いますが,分類上はいちおう同じ種ですから,生殖に関わる部分はあまり変化が大きくないのかもしれません.
駐車場から小合溜方面のラクウショウやハンノキの疎林.葉が落ちた冬のラクウショウ,ハンノキ林は明るいです.ラクウショウの樹形はメタセコイアとはかなり違っていて,メタセコイアが先端が尖ったとんがり帽子なのに対して,ラクウショウは木の上の方でもあまり狭まらずに先端が丸い印象.
橋の近くのラクウショウの木の下に,実がたくさん落ちていました.大きな丸い実で,かなり殻が硬そうに見えます.殻の表面には溝が見えていて,鱗片のように分かれそうです.「爆丸」(タカラトミー)という子供のおもちゃを思い出しました.小鳥が食べていますので,どのように食べるのかなと実を分解してみました.
実はあまり力を入れなくとも,パカッとという感じで割ることができ,それぞれの殻の鱗片ごとに茶色い種がついています.ちょうど,みかんのふさが入っているような感じで,たくさんの種が入っていました.
小鳥が食べるとしたら,どこを食べるのだろうと考えると,茶色い種そのものしか食べるところがなさそうです.ということはこの1つ1つの茶色い種を割って,種の中身を食べるのでしょう.この場合,鳥は種を壊して食べるわけで,食べられた種は発芽できません.鳥が好きな木の実をつくる木には,実は鳥に食べてもらい,種をフンと一緒に排泄してもらう戦略をもつ種類が多そうですが,これとは戦略が違います.たぶん,ラクウショウとしては,一部は鳥に食べられてもかまわないので,そのとき割れた実から,食べられなかった種が周囲に散らばることを期待しているのでしょう.
さらに実を分けてみると,茶色い種の表面が松ヤニ状にベタベタしていました.このベタベタの種なら,動物の体などにくっついて運ばれることもあるかもしれません.
水生植物園の池の木道を歩いていたら,池にラクウショウの幼木が生えているのを見つけました.池のこのあたりに生えているのは,ヨシやフトイ,カキツバタなどの水生植物です.ラクウショウも水中から生えることができるのでしょうか.それとも生えてから冠水しただけでしょうか.
葉の拡大.葉は互い違いに付いているのでラクウショウです.
ラクウショウの森の片隅で,地面から生えた不思議な構造物.表面はウロコに覆われているように見えます.ラクウショウの気根(呼吸根)です.太い根から地上に伸びてきて枝のようになったもの.メタセコイアはこの気根を出さないそうです.
よく見るといくつも地面から出ていますが,どのラクウショウにもあるのではなく,よく探さないと見つからない感じ.ラクウショウの気根といえば,新宿御苑のラクウショウのが有名です(参考6).小石川植物園でも非常に発達した気根が見られるようです(参考7).ここ水元公園ではあまり気根が目立ちませんが,参考8では,ラクウショウを通常の土地に植栽しても気根を出さないが,湿地だと気根が出るという内容が紹介されていました.ここのラクウショウの森は,気根を出すほど水はけの悪い土地でもないのでしょうか? 自分が見つけていないだけで気根は結構あるのかもしれません.
ラクウショウの紅葉は,メタセコイアの紅葉と同じく見事な色です.ラクウショウの樹形はメタセコイアのようなとんがり帽子でないことが多いので,その分は地味かもしれません.木の上のほうの枝に,実がついているのが見えます.
ラクウショウの森の道端で,手が届く高さの枝にもたくさん実が付いているのが見えました.形はスギの実に似た感じですが,直径3cmぐらいある巨大な実です.今の季節は青い実ですが,ラクウショウの実に関する記事を見つけました(参考5).実が油を多く含んでいて触ると手がベタベタになること,茶色くなって落ちてくるときは丸い形のまま落ちるが,あとでばらばらになることなど.この森では冬に冬鳥のシメがこの実をついばんでいたのを見たことがあります.油が多くて栄養価が高そうです.
バードサンクチュアリーの森とメタセコイアの森との間にあるラクウショウの森にて.ラクウショウはメタセコイアとそっくりな木ですが,メタセコイアが中国で見つかったのに対して,ラクウショウは北米原産.そのわかりやすい違いは葉や枝の付き方とのこと(参考3,4).上の写真では,細い枝が1本づつ位置がずれて出る「互生」であることがわかります.これに対して,メタセコイアは「対生」です.
こちらは葉の拡大.細い枝から葉が出るところも,1枚1枚の葉が左右交互に出ているのがわかります.この出かたも対生のメタセコイアと違います.葉の形も違うということになっていますが,こちらはちょっとわかりにくく,葉が先端に近づくに連れて,次第に幅が狭くなっていき,先が尖っています.メタセコイアでは先端のすぐ近くまで同じ幅で,先端は丸い曲線を描いて細くなっています.この違いは微妙ですね.
ラクウショウの木の全体像.樹高はかなり高く,幹はまっすぐ.脂分を含んでいて湿気に強く,枕木などに使われるそうです.ヌマスギの別名にもある通り,さすが湿地に生える木です.
ラクウショウの木の下.ラクウショウもメタセコイアも樹形が三角形(というか立体的に見れば円錐形)です.メタセコイアのほうが鋭い円錐形でラクウショウのほうがあまり先が尖っていない円錐形と言われていますが,違いはけっこう微妙かもしれません.むしろ感じるのは,上の写真のように,ラクウショウの枝は直線的に遠くまで伸びる感じなので,樹形があまり整わない,という印象でしょうか.
参考
- Farjon, A. 2013. Taxodium distichum. The IUCN Red List of Threatened Species 2013: e.T42261A2967873. http://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2013-1.RLTS.T42261A2967873.en. Downloaded on 01 January 2019.
- ラクウショウ/らくうしょう/落羽松. “庭木図鑑 植木ペディア”. https://www.uekipedia.jp/%E8%90%BD%E8%91%89%E9%87%9D%E8%91%89%E6%A8%B9/%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%A6%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%A6/, (参照 2024-03-06).
- メタセコイアとラクウショウの見分け方.“木々@岸和田”. http://zasshonokuma.web.fc2.com/ragyo/ra/rakuusho-metasekoia/rakuusho-metasekoia.html, (参照 2024-03-06).
- ラクウショウとメタセコイアをくらべる.“自然観察大学ブログ”. https://sizenkan.exblog.jp/25484953/, (参照 2024-03-06).
- ラクウショウの実にご注意. “東京ズーネット”. https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=ino&link_num=13132, (参照 2024-03-06).
- 樹齢100年を超える歴史的な樹木ラクウショウ. “一般財団法人国民公園協会 新宿御苑”. https://fng.or.jp/shinjuku/news_img/2015/07/post-225.html, (参照 2024-03-06).
- 不思議な光景~ラクウショウ(落羽松)の気根&葉と実~♪.“空に近い週末 ~ めっせーじ♪ Vol.2”, https://kotsubu.exblog.jp/13688537/, (参照 2024-03-06).
- ラクウショウの呼吸根(気根)はなぜ生えるの? “あうるの森”. https://owlswoods.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-4856.html, (参照 2024-03-06).
- . “”. , (参照 ).
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