アカゲラ Great Spotted Woodpecker
クチバシの長いキツツキ(最新の写真)
林内の道の上の木にアカゲラ.エサ探しの休憩中なのか,木に止まってじっとしています.このアカゲラはしばらく前から園内で注目を集めていた個体のようで,ふつうのアカゲラよりもクチバシがかなり長めです.本来クチバシの長さや形は鳥の種類によって決まっているわけで,何かの理由で個体変異が起こっています.その理由としては,ウイルス感染による可能性があるようです.
鳥のクチバシの長さが変わったり変形したりする症状は,avian keratin disorder; AKD(鳥ケラチン障害)として知られています(参考6).ケラチンは皮膚の角質や爪,毛などの硬い構造をつくるタンパク質で,クチバシの硬いところもケラチンによってつくられています.このケラチン層の異常の原因のひとつとしてウイルス感染が考えられていて,ケラチン層のできる速さが変わるようです.このウイルスは,最初は米国アラスカ州で見つかり,コガラ属 (Poecile) の2種類に感染することがわかったので Poecivirus (コガラウイルス)と名付けられましたが,その後,カラスやキツツキなどかなり広い範囲の鳥に感染することがわかったとのこと.参考7には,クチバシの変形した米国の鳥(アメリカコガラ,セジロコゲラ,ムネアカゴジュウカラなど)の写真が掲載されていました.面白いのは,写真を見ると,コガラの場合はクチバシが大きく反っているのに対して,キツツキの場合はクチバシはまっすぐ長く伸びていること.ケラチン障害のときのクチバシの変形のしかたが種類によって違うのは、もともとクチバシの伸び方が種類によって違うことと関係しているのでしょう.この冬,園内ではクチバシの反ったシジュウカラなども見つかっているとのこと(自分は出会えていませんが).日本の鳥にもコガラウイルスが広がってきているのでしょうか.
クチバシが変形した鳥はうまくエサが採れないとか,羽繕いもできないとか生存には大きな影響を受けるようです.キツツキにとってクチバシが長くなるのは生存に影響があるでしょうか.クチバシが長いと木をつつきにくそうですが,クチバシが反るわけではないので,木をつついたり,エサをくわえたりすること自体はできるのではないでしょうか.逆に,木に深い穴を開けられれば,他のアカゲラでは届かない奥にいる虫まで食べることができるなら,コガラウイルスが生存にプラスに作用したりして? さらに妄想すると,このウイルスへの感染率が上がると,感染した鳥のクチバシが反る種類は絶滅してしまい,感染したときにクチバシがまっすぐ伸びるキツツキのような種類だけが生き残ったりして?
伸びをしてはばたくところ.
後ろの枝に移ったところ.頭が黒いのでメスのようです.
基本情報
- 和名
- アカゲラ
- 分類
- 鳥綱 キツツキ目 キツツキ科 アカゲラ属 (Dendrocopos)
- 英名
- Great Spotted Woodpecker
- 学名
- Dendrocopos major
- 状況
- 東京都レッドリスト(本土部)2020年見直し版 東京都区部における区分:[・] 非分布,東京都本土部全体における区分:[NT] 準絶滅危惧 (参考1)
- 千葉県レッドリスト−動物編(2019年改訂版):[C] 要保護生物 (参考2)
- IUCN レッドリスト 2023-1:[LC] Least Concern (絶滅のおそれなし) ver 3.1, Pop. trend increasing (個体数増加傾向) (参考3)
写真とメモ
林縁の草地で虫を探しながら散歩していたら,上の方から低くコンコン コンコンというキツツキの音が.はるか頭上の枝にアカゲラ発見.日向になったり日影になったりで見にくかったのですが,後頭部が赤いのでオスでしょうか.この秋は園内でアカゲラやアオゲラも見られるというネット上の情報がありましたが,自分もやっと会えました.
キツツキの叩いている木はハンノキのようです.枝を小刻みに動いて体の向きを変えながら,少しずつ進んでいきます.
自分の立っているところのすぐ近くの針葉樹(おそらくラクウショウ)にいるところを,ほぼ真下から見上げて撮影.頭が赤くないので今日の写真もメス.
すっきりと晴れた冬の午前.平日に水元公園に行ってみたのは,この日がほとんどはじめて.平日は公園に来ている人の層が休日とはまったく違いました.当たり前ですよね.高齢層が中心で,高価そうな巨大なレンズのカメラを抱えて鳥を見る人,タナゴ釣りをする人,黙々と走る人…と,落ち着いた,のんびりとした雰囲気です.またいつか機会があれば是非平日に行ってみたいです.
この日は,鳥を(素人にしては)いろいろ見られましたが,そのうちの一つがアカゲラです.林の中の小道に,10台以上のカメラの望遠レンズが同じ方向を向いて並んでいるのを見かけたので,そっと近寄ってみたら,はるか遠くのアカゲラを狙っている人たちでした.その後ろから,自分もコンデジで「撮影会」に参加しましたが,ちゃんと写真が撮れました.どうもありがとうございました.ズームをいっぱいまで効かせたのですが,カメラの性能の限界か,絵の具をペタペタ置いた絵のような写真になってしまっています.これはしょうがない.
水元公園にアカゲラが来るとは知りませんでした.東京では,西の方では見たことあるように思いますが,東京都レッドリストにも,23区には「非分布」とされているのに,さすがは水元公園です.漏れ聞いた話ではさすがに園内の個体数は少ないようです,もし定着しているなら,このままアカゲラが住めるような環境が維持されてほしいものだと思います.
頭に赤い部分がないので,メスだと思います(参考5).
この日はコゲラの写真も撮れましたが,アカゲラはコゲラよりもココココンと木をつつく音が大きくて遠くからでも存在感がありありと感じられます.1本の立ち枯れのサクラらしき木を集中的につついています.一旦その場を離れ,少しして戻ってみたら,アカゲラはまだ同じ場所にいて,カメラの砲列もそろって狙っていました.
参考
- レッドリスト・レッドデータブック・植生図. “東京都環境局”. https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/red_data_book/.
- 千葉県レッドデータブック・レッドリストについて. “千葉県環境生活部自然保護課 生物多様性センター” https://www.bdcchiba.jp/reddatebook_redlist.
- BirdLife International. 2016. Dendrocopos major. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T22681124A87323054. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T22681124A87323054.en. Accessed on 02 November 2023.
- Dendrocopos major (Linnaeus, 1758) in GBIF Secretariat. GBIF Backbone Taxonomy. Checklist dataset https://doi.org/10.15468/39omei accessed via https://www.gbif.org/species/2477968 on 2023-11-02.
- キツツキの仲間(サトシンのトリ見トリ撮り 北海道の野鳥写真のページ). “サトシンの遊び場”. http://satoshin.web.fc2.com/birds/kera.htm, (参照 2023-11-03).
- Avian keratin disorder. Wikipedia, The Free Encyclopedia. December 11, 2023, 08:27 UTC. Available at: https://en.wikipedia.org/wiki/Avian_keratin_disorder. Accessed January 14, 2024.
- Deformed Bill Research. In "Project FeederWatch". Retrieved from https://feederwatch.org/learn/articles/deformed-bills-alaska/ on 2024-01-14.
- . “”. , (参照 ).
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