サザンカ Sasanqua Camellia
基本情報
- 和名
- サザンカ
- 分類
- 被子植物類 真正双子葉類 キク類 ツツジ目 ツバキ科 ツバキ属 (Camellia)
- 英名
- Sasanqua Camellia, Christmas Camellia, Yuletide Camellia
- 学名
- Camellia sasanqua(サザンカを独立種とするとき), Camellia oleifera(サザンカをユチャ[またはアブラツバキ]と同種とするとき),
- 状況
- IUCN レッドリスト 2022-2:[LC] Least Concern ver 3.1(絶滅のおそれなし), Pop. trend unknown (個体数動向 不明) (参考1) (サザンカを独立種 Camellia sasanqua としているデータベースにて)
写真とメモ
最新の写真
圃場でサザンカの植えてある一帯では,秋から冬にかけていつも花が見られますが,1本1本品種が違うらしく,花の色も形もいろいろです.撮ったことのなさそうな品種を2種類.上の写真は,八重の白い花.花は大ぶりでゴージャス.下の写真は白花で一重.花びらは薄く透き通るようで,中心にはたくさんの雄しべが黄色いアクセントになっています.
グリーンプラザの入口近くのサザンカ満開.ここのは薄ピンクの大ぶりの花です.平開する花,広がる雄しべ,小ぶりの葉で,サザンカの特徴の強い種類です.花びらのピンクの色調が微妙にムラがあり,いい感じです.
ここのサザンカはかなり春近くまで咲き続けていた印象です.
圃場の端の方の区画にサザンカの木が集められているところがあります.色とりどりの花が咲いていたのでちょうど花がフレッシュなのを撮ってみました.有名な園芸品種なのかもしれませんが,名札などは付けられていませんので,素人には品種まではわかりません.サザンカの園芸品種は何百種類もあるそうです.
写真の花は,白基調で花びらの縁がピンクになっています.花弁の数は8枚から10枚ぐらいでしょうか.花びらによってピンクの強さが違っていて変化のある表情をつくっています.その色の濃淡は下の写真のように,花が開いてもよくわかります.
こちらは園内でよく見る濃いめのピンクの花.花弁の数は上の花よりもかなり多く,15枚かもっとありそう.八重と言ってもよいのでしょうか?下の写真はもっと開いたところ.
圃場のサザンカの白い花がしばらく前から満開.ちょうど新しそうな花があったので撮影.サザンカの野生の原種も白い花だそうですが,原種の花びらは一重で,こちらは見事な八重です.
サザンカの分類を世界的なデータベースで確認してみたら(参考3),Camellia oleifera(和名 ユチャ,またはアブラツバキ)という中国などに分布する種類と同種として扱われていました.参考4は,ユチャとサザンカを同種として扱う場合の分布図です.中国から日本にかけて記録が分布しています.以前,サザンカ,カンツバキ,ツバキの違いについて調べたことをまとめた文(このページの下の方)もちょっと加筆してみました.
以前花の写真を撮った圃場のサザンカに実を見つけました.一部の実は割れて,中に大きな種が見えます.
サザンカとツバキとの区別法として,実に毛が生えているかどうかということも挙げられています.サザンカの実には毛が生えていて,ツバキの実は毛がないそうです.上の写真,この拡大だと表面にツヤがあるのは見えますが,毛が生えているのかわかりにくいかもしれません.写真をクリックして拡大すると毛が生えているのが見えると思います.
以前撮影したサザンカの花は,圃場に植えられた木でしたが,こちらは森のなかの一画です.きっとこちらもカンツバキ系のサザンカなのだと思いますが,春近くなっても花が咲き続けています.平たく開いた花,筒状にならず広がったおしべがサザンカの特徴.
ヤブツバキのページにも写真を載せましたが,この場所にはちょうどサザンカとヤブツバキが,どちらも赤い花ですが並んで生えています.向かって右の少し背の低い木がサザンカで,左側の背の高いほうがヤブツバキ(ツバキ)です.ヤブツバキのページと交互に見比べるとその違いがわかると思います.
このサザンカの葉はとなりのツバキの葉よりも小さめで,表面が平らでツバキのように上に凸に盛り上がらず,葉の表面はツバキよりもツヤが少ないように感じました.
右側の木,サザンカの下にはばらばらになった花びらが落ちています.ツバキの下には花ごとボトッと落ちていました.
終わった花を見ても,違いがあります.サザンカではこのように,花びらの一部とおしべが残っていますが,ツバキはおしべと花びらがひとかたまりで落ちるので,めしべだけが残ります.
おしべが残った花.真ん中から真っ直ぐ伸びるのがめしべ.
圃場の一画にまとまって植えられていたサザンカに,赤やピンクの花が満開になっていました.品種などはわからないので種名として「サザンカ」ということにしておきます.咲き終わって花びらが落ちた花や,いまちょうど開いたばかりの花,つぼみなどがたくさんあり,ここの花は,冬のかなり長い期間咲いていそうです.2月に花真っ盛りであること,背の高い樹形などから,サザンカの品種のうち,カンツバキと呼ばれるもの,たとえば,「タチカンツバキ」と呼ばれるような品種のどれかだと思います.
サザンカとツバキの区別は,花が散るときに,花びらが1枚1枚落ちていくのがサザンカで,花全体がぼとっと落ちるのがツバキ,というのは子供のころに祖父母の世代に教わったこととして頭に残っています.ツバキは花が落ちるのが斬首や死を連想させるため縁起が悪く,武家屋敷には植えなかったとか,いまでも病院の植え込みには使われないとか.ただ,サザンカやツバキについて,これ以上の認識がなかったので,ちょこっとだけ調べてまとめてみました.
サザンカ,カンツバキ,ヤブツバキ(ツバキ)について
自分が納得した内容を整理したものです.きちんとした情報は,下に挙げた参考2がわかりやすかったです.
- サザンカ,カンツバキ,ヤブツバキは,みな同じツバキ属 (Camellia カメリア) に分類されている.
- サザンカ(Camellia sasanqua カメリア・ササンカ)はもともと日本にも野生種が分布する在来種で,白い花の種類.分布はインドネシアから台湾,中国,日本まで.日本が分布の北限にあたり,九州などに自生している.これをもとにサザンカの園芸品種がつくられた.ただし,最近の国際的な分類では中国に分布するユチャ(アブラツバキ)Camellia oleifera(カメリア・オレイフェラ)という種と同種の異名(シノニム)として扱われることもある.
- カンツバキとは,もともと日本に古木のあることが知られているシシガシラ(獅子頭)という種類があり,これの関東での別名がカンツバキ.赤い花の種類.シシガシラ(カンツバキ)という種類は日本固有種として扱われたこともある(その場合の学名は Camellia hiemalis カメリア・ヒエマリス)が,その由来を更にさかのぼると遺伝子的にはサザンカと中国原産の他のツバキ類の種間雑種らしい.学名は種間雑種であることを示す"x" をつけて,Camellia x hiemalisとすることもあったが,サザンカの品種として考えられている.
このカンツバキをもとにした園芸品種も通称カンツバキと呼び,サザンカの品種として扱われている.何と掛け合わせたかによって,サザンカの影響の大きさは異なる(下のサザンカの品種のグループ分けを参照). - ツバキとは,ヤブツバキ(Camellia japonica カメリア・ヤポニカ)という日本の在来種とその品種のことをさす.原種は赤い花で,日本の他,朝鮮,台湾,中国にも分布.
ということのようでした.カンツバキはサザンカのグループに含まれ,ツバキといえばヤブツバキのことを指し,カンツバキのことを単にツバキとは呼ぶことはありません.「サザンカとツバキとの区別点」と言うときは,サザンカとヤブツバキとの違いであって,サザンカとカンツバキとの違いではないということですね.
サザンカの品種のグループ分けについて
- サザンカの園芸品種は300種類以上.花の色は白以外に,赤やピンクなどいろいろある.
- 江戸時代から,サザンカの園芸品種が作られる過程で,たいていサザンカ以外の種(他の種類のツバキ類)と交雑させているらしい.交雑の相手はカンツバキや日本在来のヤブツバキなど.サザンカの品種に白以外の花色があるのはそのため.また,現在ではカンツバキもサザンカの品種扱いなので,カンツバキとなにかを交雑させた種類も含まれる.なので,どのぐらい他の種類の影響を受けているのかは,サザンカの品種の系統によって違い,品種をいくつかの大きくグループに分けて考えることが多い.
- (サザンカの)サザンカ群の品種:サザンカ以外の種類の影響が比較的少ない品種のグループ.花色こそ白以外の色がいろいろあるが,サザンカの原種の特徴が一番残っていて,厳密な意味でのサザンカの品種はこのグループだけ.
- (サザンカの)カンツバキ群の品種:シシガシラ(カンツバキ)をもとにして作られたグループをまとめて(サザンカの)カンツバキ群という.「シシガシラ(カンツバキ)という種類の品種」として考える立場もあるが,カンツバキそのものががサザンカの品種なのでここに含められる.シシガシラ(カンツバキ)は背の低い種類なので,その影響が強いと,背の低い品種となる.シシガシラ(カンツバキ)と上のサザンカ群のように背の高い種類との雑種は,背が高くなり,タチカンツバキと呼んだりもする.タチカンツバキもカンツバキ群に含まれる.
- (サザンカの)ハルサザンカ群の品種:上のサザンカ群と,日本産の野生種ヤブツバキやその園芸品種との種間交雑でつくられたハルサザンカという種間雑種がある.ハルサザンカからつくられた品種や,ハルサザンカとサザンカ群との交雑でできた品種などをまとめてハルサザンカ群という.こちらも,サザンカの品種ではなく,「種間雑種ハルサザンカの品種」として考える立場もある.
- タゴトノツキ群と呼ばれているグループ:古くからサザンカの品種として考えられてきたタゴトノツキという品種を調べてみたら,サザンカではなく,中国産のユチャの品種だった.
- サザンカ群の品種は10月~12月に咲くが,カンツバキ群は11月~3月頃まで,ハルサザンカ群は12月~4月頃まで咲く.つまり,サザンカは早咲きだが,カンツバキやヤブツバキの影響が入ると開花時期が遅くなる.
- 花は,サザンカの影響が強い品種は,花が平開する.ヤブツバキの影響が強いとおしべが筒状に揃って並ぶ.めしべの付け根の膨らんだところ(子房)に毛が生えているのはサザンカの影響で,ヤブツバキは無毛.また,枝が上に伸びて背が高くなるのはサザンカやヤブツバキの影響で,背が低いのはカンツバキの影響.
木の高さは2, 3mぐらいでしょうか.水元公園の林の中のあちこちにも,これと同じような花が咲いていますが,樹高は4,5mになっているのも見ます.
葉の様子.小さな鋸歯,先がすっと尖った形.
樹冠の方は花が特に多くて見栄えがします.
参考
- Wheeler, L. & Rivers, M.C. 2015. Camellia sasanqua. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T62057947A62057951. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T62057947A62057951.en. Accessed on 26 December 2022.
- 箱田直紀(監修). “東京農工大学のサザンカ”.東京農工大学農学部.2003年. http://www.sato-tsubaki.co.jp/source/C.sasanqua.pdf.
- Camellia oleifera: In "World Plants". Retrieved from http://www.worldplants.de/?deeplink=Camellia-oleifera
- Camellia oleifera Abel. in GBIF Secretariat (2021). GBIF Backbone Taxonomy. Checklist dataset https://doi.org/10.15468/39omei accessed via https://www.gbif.org/species/8307542 on 2022-04-01.
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