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バードサンクチュアリの林,2024年3月31日午前,晴れ

バードサンクチュアリ前のヤマザクラの木が満開でした.今年の春はカワヅザクラオオカンザクラは早かったのですが,その後寒くなったためか,その後に続くサクラが咲き始めるのが遅かったようです.その後また暖かくなると,ソメイヨシノやヤマザクラが一気に咲き始めて,あっという間に満開になった印象です.

バードサンクチュアリの林,2024年3月31日午前,晴れ

花の特徴の確認.ヤマザクラの花をガクの側から見ると,ガク片が細くて先が長く尖っています.園内で見られるサクラの中でガクが一番細いかも.

バードサンクチュアリの林,2024年3月31日午前,晴れ

ガク筒はほっそりとした円錐状で直線的,くびれなし,毛なし.

バードサンクチュアリの林,2024年3月31日午前,晴れ

下向きにぶら下がった3つの花の小花柄の付け根に花柄がありました.

バードサンクチュアリの林,2024年3月31日午前,晴れ



基本情報

和名
ヤマザクラ
分類
被子植物類 真正双子葉類 バラ類 バラ目 バラ科 サクラ属 (Prunus)
英名
Japanese Hill Cherry, Japanese Mountain Cherry
学名
Prunus jamasakura (Makino) Nakai
Syn. Prunus serrulata spontanea (E. H. Wilson) Chin S. Chang
Syn. Cerasus jamasakura (Siebold ex Koidz.) X. R. Wang & C. B. Shang
状況
IUCN レッドリスト 2023-1[LC] Least Concern (絶滅のおそれなし) ver 3.1, Pop. trend stable(個体数動向 安定) (参考1)

写真とメモ

バードサンクチュアリの林,2020年3月22日午前,晴れ

バードサンクチュアリの観察所の入口のサクラの木はソメイヨシノだとばかり思っていましたが,花が咲いているところを見たらヤマザクラでした.これまでこの時期に見ていなかったようです.以前,この木が秋に花をつけたことがあったのですが,その時の写真もこのページに移動しました(下).

ヤマザクラは日本の野山に自生している野生種です.ソメイヨシノは満開のとき葉がまだ出ていませんが,ヤマザクラは赤く色づいた葉がたくさん出はじめていてかなりワイルドです.

バードサンクチュアリの林,2020年3月22日午前,晴れ

花はかすかにピンクがかった色で,ソメイヨシノに近いです.ヤマザクラは,ソメイヨシノを作る元になった種類のひとつと言われているので,花は似ていますが,花と同時に広がる葉の印象が強いので全体の雰囲気がかなり違います.ヤマザクラも力強くてきれいですが,日本中でサクラの花見が年中行事になるほど印象的かというとそこまでではないかもしれません.かつてサクラの野生種から観賞用の品種を作り出そうとした人は,花を大きくするとか,花がたくさん咲くようにするとかと同じぐらい,花が咲くときにまだ葉が出ない品種を目指したのではないかと感じます.

バードサンクチュアリの林,2020年3月22日午前,晴れ

ガクと花の付け根の様子.ソメイヨシノとヤマザクラで違うところは,ガク片は三角形で鋸歯がありません(ソメイヨシノはガクの縁がキザギザ).ガク筒は途中でくびれがありません(ソメイヨシノは途中細くなって少しくびれる).また,ガク筒や小花柄には毛がありません(ソメイヨシノは毛がもじゃもじゃ).他に,小花柄の付け根に短い花柄があるはずなのですが隠れて見えません.

ヤマザクラの学名を調べたら,ヤマザクラだけを単独の種類 jamasakura (ヤマザクラ)種にする場合と,東アジアに分布する何種かとあわせて serrulata (セルラータ)種とし,ヤマザクラはその spontanea (スポンタネア)亜種とする考え方があるようです.serrulata 種とした場合,サトザクラ群の品種や寒桜系なども,ヤマザクラの影響の強い種類を serrulata 種の品種の扱いにすることがあるようです.


秋の狂い咲き

バードサンクチュアリの林,2013年10月13日朝,晴れ

バードサンクチュアリの観察所の入口のところにあるヤマザクラに花が咲いていました.

今年の10月初めは真夏日もあったほど暑い日が続き,この影響なのか,普段はめったに秋には咲かないソメイヨシノが都内で咲いたのがニュースになりました.参考4は,水元公園と亀戸中央公園で咲いたというニュース記事.記事から国立科学博物館付属自然教育園のコメントを引用すると,

今年は猛暑や台風の影響で葉が例年より早く落ち,「開花時期をコントロールする葉がなくなり,咲く時期を間違えたのでは」としている.
ということです.開花時期の調節には周囲の温度だけでなく,葉があるかどうかが関係していて,葉があるときはうかつに咲かないようなメカニズムになっているということなのでしょうか.

このコメントを読んで思い出したことがあります.しばらく前,この木には,サクラケムシ(モンクロシャチホコの幼虫)が無数に取り付いて,葉をほとんどすべて食べ尽くしてしまっていたのでした.猛暑や台風の影響もあるのかもしれませんが,この木については,葉がなくなってしまった原因はガの幼虫の大発生なのではないでしょうか.

バードサンクチュアリの林,2013年10月13日朝,晴れ

この辺りの枝には,少し葉が残っています.

バードサンクチュアリの林,2013年10月13日朝,晴れ

花はぽつりぽつり,ヤマザクラの春の満開は,赤い葉と一緒に花が咲きますが,いまは葉が緑なので,春の満開とは違った風情がありますね.



参考

  1. Oldfield, S. 2021. Prunus jamasakura. The IUCN Red List of Threatened Species 2021: e.T173917565A173917817. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2021-1.RLTS.T173917565A173917817.en. Accessed on 08 April 2023.
  2. 犀川,岩元:野外学習用の桜の検索表の作成とその実践.東京学芸大学紀要. 自然科学系 59: 61-67, 2007. https://u-gakugei.repo.nii.ac.jp/records/25955.
  3. ヤマザクラ. “三河の植物観察”. http://mikawanoyasou.org/data/yamazakura.htm, (参照 2023-04-08).
  4. 江東と葛飾で季節はずれの桜…猛暑の影響か(2013年10月3日 読売新聞). “YOMIURI ONLINE”. http://www.yomiuri.co.jp/otona/news/20131003-OYT8T00368.htm, (参照 2013-12-08).
  5. . “”. , (参照 ).