カワヅザクラ Kawazu-zakura Cherry
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駐車場前のカワヅザクラの木.まだ花が少ない早春に,中央通りの目立つところで咲いているので撮りに来てしまいます.この日はよく晴れた空の青い日.カワヅザクラの濃いピンクは深い青空によく映えます.全体的に,今年は暖冬のせいか開花が早かったのではないかと思います.上の写真の枝は満開に近い咲き方ですが,同じ木でも枝によっては一・二分咲きです.
つぼみのピンク色は特に濃いので,まだつぼみのある枝のほうが花色が濃く見えます.
短い花柄が小花柄に分かれて花がついていること,ガク筒の形が分かる写真.
花のおしべとめしべ,ガク片が分かる写真.
自分の考えるカワヅザクラといえばこの写真のイメージ.
基本情報
- 和名
- カワヅザクラ(河津桜)
- 分類
- 被子植物類 真正双子葉類 バラ類 バラ目 バラ科 サクラ属 (Prunus またはCerasus)
- 英名
- Kawazu-zakura Cherry
- 学名
- Prunus × kanzakura 'Kawazu-zakura'
(オオシマザクラとカンヒザクラの種間雑種カンザクラ × kanzakura の栽培品種のひとつとする場合)
Syn. Prunus jamasakura 'Kawazu-zakura'
(種間雑種カンザクラ kanzakura を認めず,ヤマザクラ jamasakura と同一とする場合)
Syn. Prunus × lannesiana 'Kawazu-zakura'
(オオシマザクラ由来の交雑種サトザクラ × lannesiana の1品種とする場合) - 状況
写真とメモ
カワヅザクラの分類について
カワヅザクラ(河津桜)の分類と遺伝的背景,形態的な特徴について確認してみました.カワヅザクラのDNAを調べると,野生種のオオシマザクラ(大島桜)と野生種のカンヒザクラ(寒緋桜),そして同じく野生種のヤマザクラ(山桜)などの遺伝子を含んでいたとのことで,これらが自然状態で交配された種間雑種ということがわかっているようです.静岡県河津町に1本の原木があり,これから分けられて増やされたクローンが分類上の栽培品種「河津桜」と呼ばれています.
カワヅザクラの学名の付け方にいくつか流儀があるようで,上に併記してみました.属を Prunus (広義のサクラ属,スモモ属)にするのか,Cerasus (狭義のサクラ属)にするのかは,サクラ類共通の話題なのでここでは省略して,Prunus に統一して書きます.
日本では,カワヅザクラの学名は,Prunus × kanzakura 'Kawazu-zakura' とされている場合が多いようです.× は種間雑種の意味で,雑種の学名は何と何を交配したのかで決められますが, kanzakuraという種類は,オオシマザクラとカンヒザクラの間の雑種につけられた学名とのこと.同じ野生種の組み合わせでつくられた雑種には,カワヅザクラ以外にも,カンザクラ(寒桜),オオカンザクラ(大寒桜)などもあります.これらにも同じ × kanzakura という学名が当てられ,つまり,kanzakura という雑種に,カワヅザクラ,カンザクラ,オオカンザクラなどいくつかの栽培品種がある,という考え方となります.野生種カンヒザクラを元にして作られた栽培品種群をカンヒザクラ群と呼ぶそうですので,これらはみなカンヒザクラ群ということになります.
一方,国際的には Prunus jamasakura 'Kawazu-zakura' という学名を当てられることのほうが多いようです.Prunus jamasakura という学名は野生種ヤマザクラの学名ですが,国際的なデータベース(World Plants等)では, × kanzakura という種間雑種をみとめておらず,ヤマザクラのシノニムとして扱われています.したがって,カワヅザクラはヤマザクラの栽培品種という扱いです.
また,野生種のオオシマザクラをもとにした栽培品種群を,サトザクラ群としてまとめて呼びますが,カワヅザクラもオオシマザクラをもとに作られているので,ここに含めることもあるようです.この場合の学名は,Prunus × lannesiana 'Kawazu-zakura' となります.× lannesiana は,オオシマザクラとヤマザクラ,オオヤマザクラの種間雑種に対してつけられた学名です.日本で言うサトザクラ群はこの組み合わせ以外の栽培品種も含む,もっと広い概念のようです.
2月から3月まで長い期間咲き続けるカワヅザクラですが,今がもっとも盛りの咲き方です.花は少しずつ時期をずらして咲いていき,全部が同時に開くわけではないので,「満開」とは呼ばないのかもしれませんが.カワヅザクラのピークは長いです.
葉もどんどん伸びてきています.濃いピンクの花とみずみずしい若葉の色が重なるのもカワズザクラのきれいなところ.
この後,次第に新しく咲く花が少なくなりつつ,葉はどんどん広がって,色合いがピンクから緑に変化して行きます.
園内の河津桜が咲き始めていました.まだ三分咲きにもなっていない感じ.河津桜の花の特徴の確認.写真からは,小花柄には毛がなくてツルツル,萼筒にはくびれがなく鐘状,萼片には鋸歯がごくわずかなどがわかります.
小花柄の根元に花柄がある,花は平開する.まだ裂いた花がごくわずかで,つぼみが大きくなっているのも少数です.花期の長いサクラなので,すぐに満開にはならず,一部のつぼみから順に膨らんで咲いていき,長い期間楽しめるものと思います.
花の咲いた枝はごくわずかで,ほとんどの枝はまだつぼみばかりです.つぼみはみずみずしい黄緑色です.
園内の何箇所かに,まだ寒い2月下旬から咲き始めるサクラ「河津桜」が植えられています.花の咲いている期間が非常に長い種類のようで,3月上旬には満開で見頃になりますが,このときは咲き初めからもうひと月近くたってもまだ花がきれいです.葉もかなり出てきて見頃の時期を逃してしまったのですが,記念写真を撮ってきました.
花のピンク色のかなり濃い種類で,がくや雄しべなども赤いため,彩りが強い花ですね.伸びてきた若葉とあわせて,桜餅の色の印象.この時期,花は終わりかけていて,花びらが散ってしまっているのも多いです.園内では,オオカンザクラの見頃も近づいてきて,その後はソメイヨシノ,オオシマザクラ,ヤマザクラ… と次々と見頃を迎え,一気に春らしくなってきます.
形の特徴ですが,カンヒザクラは花が平開しないのが特徴とのことですが,このサクラの花は平開しています.はっきりした花柄があり,そこから小花柄が出ています.小花柄にはほとんど毛がなく,萼筒はくびれのない鐘形,萼片にはめだたない鋸歯がわずかにあるように見えます.参考2の検索表で種の区別を試してみると,「萼片に鋸歯がある」を選ぶとオオシマザクラ,「なし」を選ぶとヤマザクラになってしまいます.一方,栽培品種の区別を試してみると,「萼片の鋸歯が目立たない」グループのうち,「花期が極端に長い」とカワヅザクラ,「花期がやや長い」とカンザクラ,オオカンザクラなどのカンザクラ類にたどり着きます.当たらずとも遠からずというところでしょうか.
自分は写真の色を強調したりしていないのですが,この花の色味です.ソメイヨシノにはない力強さです.
参考
- 犀川,岩元:野外学習用の桜の検索表の作成とその実践.東京学芸大学紀要. 自然科学系 59: 61-67, 2007. https://u-gakugei.repo.nii.ac.jp/records/25955.
- . “”. , (参照 ).
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