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園内の水辺,2023年7月16日朝,晴れ

ヒシの花が咲き始めていました.ヒシの花は夏から秋にかけて咲きます.園内では小合溜の大部分がヒシにびっしり覆われた年も過去にありましたが,駆除されて以降は探さないと群落が見られないようになっています.この場所では数平方メートル範囲にヒシの葉が広がっていて,花はよく探さないとわかりませんが,ポツポツと咲いていました.

園内の水辺,2023年7月16日朝,晴れ

こちらは花はついていませんが,株の中心には広がりつつある葉がぐるぐる巻かれています.

園内の水辺,2023年7月16日朝,晴れ

こちらは2個.黄色い葯が見えています.



基本情報

和名
ヒシ
分類
被子植物類 真正双子葉類 バラ類 フトモモ目 ミソハギ科 ヒシ属 (Trapa)
英名
Water Caltrop (natans種), Singhara Nut (bispinosa 亜種)
学名
Trapa natans var. bispinosa, syn. Trapa japonica)
状況
東京都レッドリスト(本土部)2020年版 東京都区部における区分:[NT] 準絶滅危惧,東京都本土部全体における区分:[CR] 絶滅危惧 IA 類 (参考1)
埼玉県レッドデータブック2011 植物編 [NT] 準絶滅危惧 加須・中川低地における分布状況:○ (参考2)
IUCN/ISSG 世界の侵略的外来種侵略的外来種(北米,ヨーロッパ,オーストラリア),原産(日本を含むアジア,ヨーロッパ,アフリカ) (参考3)(ただし,Trapa natan 種として)
IUCN レッドリスト 2022-2[LC] Least Concern ver 3.1(絶滅のおそれなし), Pop. trend unknown (個体数動向 不明) (参考4)(ただし,Trapa natan 種として)

写真とメモ

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小合溜,2018年4月29日朝,晴れ

小合溜の春の水辺.水べの木の根元に大量のヒシの実が敷き詰められたように並んでいます.小合溜に波の高いときはこの場所は水をかぶる場所なので,水を漂ってきた実が打ち上げられたものと思います.ヒシの実は水底にも高密度に沈んでいると思いますので,今年も夏になったらヒシで水面が覆われることになるのでしょう.



小合溜,2017年9月3日朝,晴れ

夏の間,小合溜の水面のかなりの部分を覆い尽くしていたヒシの葉が茶色く枯れてきたところです.このあと1ヶ月もせずに水面にはヒシが全く見えなくなり,また春にヒシが増え始めるまではクリアな水面です.

小合溜,2017年9月3日朝,晴れ

葉が枯れ,茎(葉柄)が見えていますが,そのうち葉柄も茶色く枯れていきます.



小合溜,2017年8月25日午後,くもり

2014年ぐらいから,夏の小合溜がヒシの葉で覆われるようになりました.今年もヒシがびっしりでしたが,上の写真は小合溜がヒシで覆われているのを撮ったのではなく,初夏からずっと水面を覆っていたヒシの葉の色が茶色っぽく変わってきたのに気づいたので撮りました.この時期はもうヒシの実ができた後で,もうすぐ水面を覆うヒシの株は枯れ,来年の春までは水面がすっきりします.しかし,ヒシの葉や茎は腐って水中に沈みます.これが最近の小合溜の水質の悪化に影響を与えているらしいという話を(立ち話で)聞きました.腐ったヒシが水底でヘドロ化し,大量の有機物が水中にあることで水が富栄養化して水中の植物プランクトンが増えたり,コイやフナが水底の沈殿物をハフハフしながら泳ぐことで巻き上がり,さらに水が濁ります.ヒシは東京都や埼玉県の絶滅危惧種に指定されていますが,そういう地域でも,ちょっとした加減で大繁殖して大変なことになる種類ということを考えると,元は分布していなかった北米,オーストラリアなどで侵略的外来種になってしまうのも理解できます(参考3).

ヒシの分類は,ネット上にある日本語の資料を見ると,Trapa japonica(トゥラパ・ヤポニカ)という独立種となっていますが,参考5などの国際的なデータベースによると, Trapa natans(トゥラパ・ナタンス)というユーラシア大陸を中心に世界に広く分布する種の変種 Trapa natans var. bispinosa(ビスピノーサ,「2本のトゲ」の意味)にされていました.bispinosa亜種は,東アジアの他,アフリカにも分布するようです(参考6).日本産ではオニビシという種類も,Trapa natans 種の var. japonica 変種なので,オニビシとヒシは同じ種の変種どうしの関係ということなのですね.



小合溜,2014年7月20日午後,晴れ

小合溜の花菖蒲園付近でヒシの花が咲いていました.今年の小合溜はなぜか水際がびっしりとヒシの葉に覆われていますが,その場所です.花は小さくて近づいてよく見ないと葉に反射する光に紛れて気づかないほどです.

小合溜,2014年7月20日午後,晴れ

花は株の中心付近の水上にあります.花が終わると花の付いている茎は水中に下がり,水中で実をつけるとのこと.

小合溜,2014年7月20日午後,晴れ

風でひっくり返ったのか,何かに引っかかったのか,裏返った葉がありました.葉の茎(葉柄)の途中に膨らんだところがあり,ここが浮きの働きをして葉が水上に出ているのを助けるそうです.

小合溜,2014年7月20日午後,晴れ

びっしりと水面を覆ったヒシの葉.ヒシの葉の増え具合はなぜか年によりかなりのばらつきがあるようです.この年は自分がここに着始めて数年間でもっともヒシが繁茂した年でした.



小合溜,2014年5月5日夕方,くもり

小合溜の花菖蒲園の前.水面にだんだんと増え始めたヒシの葉です.葉だけではヒシの仲間の区別は難しいようですが,付近にたくさん散らばっているヒシの実の形が2本トゲなのでヒシだと思います.

小合溜,2014年5月5日夕方,くもり
小合溜,2014年5月5日夕方,くもり

水面の半分ぐらいがヒシの葉で覆われています.



小合溜の水路,2014年2月27日午後,晴れ

まだ水の冷たい早春ですが,小合溜の水路で子どもと小物釣り.この日は,魚よりもたくさん針にかかったのが上の写真.ヒシの実です.水底に針を下ろすとちょうど芽を出した時期のヒシに引っかかりやすいものと想像します.実から出た茎は地下茎のほうな感じで茎や根がわかれるように見えます.

たくさん針にかかったヒシの実を持ち帰り,見た目がちょっと違うもの(サイズや形)を並べてみたところ.左の2つの実が小さめ.一番右が大きめで実の中央にこぶがあるように見えます.写真中央の3つは中間の大きさ.はっきりしたトゲは2本なので,4本トゲのオニビシの系統の種類ではなく,ヒメビシほど小さな実ではないので,ヒシだと思われました.ネット上の情報を見る限り(参考8など),ヒシの実にはかなり変異が大きく,コブがあったりサイズが違ったりというのはあるようです.

横から見たところ.中央部のコブっぽいところも,オニビシの4本トゲとはまったく異なるように見えます.

ヒシのトゲの拡大.逆トゲになってます.取り扱い注意! これが体に刺さったら抜けにくそうですし,無理に抜こうとするとトゲが体内に残ってしまったりして….忍者がマキビシに使ったのは4本トゲのオニビシのようですが,このヒシの実でも迫力十分です.


参考

  1. レッドデータブック. “東京都環境局”. https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/red_data_book/.
  2. 希少野生生物(レッドデータブック・・・). “埼玉県”. https://www.pref.saitama.lg.jp/a0508/red/.
  3. Global Invasive Species Database (2023) Species profile: Trapa natans. Downloaded from http://www.iucngisd.org/gisd/speciesname/Trapa+natans on 22-07-2023.
  4. Lansdown, R.V. 2019. Trapa natans. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T164153A120228484. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T164153A120228484.en. Accessed on 22 July 2023.
  5. Trapa natans var. bispinosa (Roxb.) Makino : In "Catalogue of life". Retrieved from https://www.catalogueoflife.org/data/taxon/7N3JR on 2023-07-22.
  6. Trapa natans var. bispinosa (Roxb.) Makino in GBIF Secretariat (2022). GBIF Backbone Taxonomy. Checklist dataset https://doi.org/10.15468/39omei accessed via https://www.gbif.org/species/4204450 on 2023-07-22.
  7. ヒシ Trapa japonica ミソハギ科 Lythraceae ヒシ属. “三河の植物観察”. https://mikawanoyasou.org/data/hisi.htm, (参照 2023-07-22).
  8. 変異幅の広い種 1 -ヒシの果実の変異-. “西宮の湿生・水生植物”. http://plants.minibird.jp/comparison/hisiVar/hisiVar.html, (参照 2023-07-22).
  9. . “”. , (参照 ).