基本情報

和名
オオムラサキホコリ
分類
原生動物界 変形菌門 変形菌綱 ムラサキホコリ目 ムラサキホコリ科 ムラサキホコリ属 (Stemonitis)
英名
Chocolate Tube Slime
学名
Stemonitis splendens
状況

写真とメモ

小合溜沿いの疎林,2023年7月16日午前,晴れ

小合溜沿いのヤナギの大木を遠くから見ると,木の幹に何箇所も黒くなっている箇所があるのを発見.黒いところの近くに寄ってみると,細い黒っぽい紫褐色のソーメンの塊が盛り上がっていました.黒い部分1箇所の大きさは数cm四方で,ソーメンっぽい部分の長さは2cm~2.5cm程度です.この構造を見てやっとこれは粘菌ではと認識.ムラサキホコリ類の粘菌は園内初見で非常にうれしいです.粘菌は林の中の地面に見つけてきましたが,この場所は小合溜沿いにまばらに木の生えているエリアで,いかにも湿度の高そうな林ではありません.ただ,地面にはウッドチップが敷き詰められているところなので,変形体は普段はウッドチップに潜んで暮らしていて,近くの木に登って子実体になるのでしょうね.

黒紫褐色の塊の上端には白く光る部分があり,これがおそらく変形膜(変形体だったところ).下の写真はその境界部の拡大です.

小合溜沿いの疎林,2023年7月16日午前,晴れ

白銀色の部分から,黒っぽくてツヤがある子実体の柄がびっしり立ち上がっています.髪の毛の生え際のようです.柄はあまり長くなく,4mm以下程度.子嚢の表面はザラザラで,細く伸びて,互いに絡まり合ったりする感じは,もう成熟して胞子が飛んでいるような段階でしょう.

参考2によると,オオムラサキホコリは子実体の長さが25mmまで,柄はその長さの1/6以下とあります.近似種との区別では,ヤリミダレホコリというのは柄がほとんどなく,ムラサキホコリは柄が長く,子実体の1/4~1/2ほどもあること,サビムラサキホコリは更に柄が長く1/2程度まで.また,これらの種類は子実体の長さの上限が20mmまでということで,オオムラサキホコリが候補となりました.

小合溜沿いの疎林,2023年7月16日午前,晴れ

オオムラサキホコリを見つけたヤナギの木.写真の黒っぽい部分がぜんぶ子実体です.いくつもの群落が木の幹の高さ3mぐらいまで点在していました.同じ木の高いところ(上の写真)と地面の近く(下の写真).

小合溜沿いの疎林,2023年7月16日午前,晴れ

小合溜沿いの疎林,2023年7月16日午前,晴れ

こちらは,子実体の先端がたくさん集まってかたまっているように見えています.想像ですが,変形体が子実体の形になる前に,風が吹いて湿度が下がって乾燥してしまい,途中でかたまってしまったのではないでしょうか.参考3にもこれと似た写真がありました.

小合溜沿いの疎林,2023年7月16日午前,晴れ

変形膜から子実体が立ち上がるところの拡大.

小合溜沿いの疎林,2023年7月16日午前,晴れ

子実体の先端.黒っぽくなってかたまっているところがあります.

小合溜沿いの疎林,2023年7月16日午前,晴れ

こちらは別の子実体.子嚢が細くぶら下がっているところ.おそらく成熟が進んだところ.

小合溜沿いの疎林,2023年7月16日午前,晴れ

こちらは,風が吹くとフワフワなびいていた子実体.おそらくすでに胞子を飛ばし終わったところ.

小合溜沿いの疎林,2023年7月16日午前,晴れ

一番下の方に,1つだけ子実体がほとんど長く伸びていないものがありました.別種の粘菌の可能性もありますが,同じ種類の子実体のできそこない説.

小合溜沿いの疎林,2023年7月16日午前,晴れ

その子実体の拡大.丸い盛り上がりが色だけ黒っぽくなっていました.



参考

  1. Stemonitis splendens Rostaf., 1874 in GBIF Secretariat (2022). GBIF Backbone Taxonomy. Checklist dataset https://doi.org/10.15468/39omei accessed via https://www.gbif.org/species/5425763 on 2023-07-18.
  2. オオムラサキホコリ.川上,新井,髙野 著:変形菌.発見と観察を楽しむ自然図鑑.山と渓谷社.2022, p118. https://amzn.to/3zYNgCe.
  3. ムラサキホコリの一種(おそらくオオムラサキホコリ). “但馬情報特急”. https://www.tajima.or.jp/nature/others/119422/, (参照 2023-07-18).
  4. オオムラサキホコリ. “そよ風のなかで Part2”. https://soyokaze2jp.blogspot.com/2021/07/blog-post_09.html, (参照 2023-07-18).
  5. オオムラサキホコリ. “三河の植物観察”. https://mikawanoyasou.org/kinoko/oomurasakihokori.htm, (参照 2023-07-18).
  6. . “”. , (参照 ).