基本情報

和名
ススホコリ
分類
原生動物界 変形菌門 変形菌綱 モジホコリ目 モジホコリ科 ススホコリ属 (Fuligo)
英名
Dog Vomit Slime Mold, Scrambled Egg Slime Mold
学名
Fuligo septica
状況

写真とメモ

最新の写真

園内の林,2022年10月2日午前,晴れ

道端の材の高くなったところに黄色っぽいススホコリの子実体を発見.淡黄色の網目状醸造が広がっています.淡黄色の下には濃い色の部分が透けて見えるので,成熟した子実体だと思います.

子嚢の細毛体と石灰節が鮮黄色なのがキフシススホコリという品種とのことです.変形菌の細毛体と石灰節とは,子嚢を支える骨格にあたる構造で,胞子が弾けた後の子嚢で見ることができるフワフワの繊維状の構造です(参考3).ススホコリの細毛体や石灰節は,おそらく表面の黄色い部分ではなくその奥にある黒っぽい部分の内部にあると思うのでこの状態ではわからないのではないかと思います.

園内の林,2022年10月2日午前,晴れ

黄色い部分の間にある,木と同じ色の部分が子実体に変わらなかった変形体が残った変形膜にあたる部分.そこに見える透明の糸を引いたような構造になっています.

園内の林,2022年10月2日午前,晴れ

上の写真は黄色い部分に覆われた黒い構造が見えています.子嚢の胞子が成熟して見えている状態.

園内の林,2022年10月2日午前,晴れ

園内で粘菌を見つけるのは雨の翌日,翌々日が多いのですが,この日以前に雨が降ったのは前の週の半ばにパラッとにわか雨があったかな?ぐらいでしばらく雨が降っていなかった記憶があります.秋は朝露なども降りるので,雨がなくとも活動場所の水分は補給されるのかもしれません.



小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり

水元公園で変形菌(いわゆる粘菌)をみつけました.見つけた場所は小合溜沿いの草地で,そこには森の中に積んであったウッドチップが移されて山と積んでありました.チップの山のある場所は直射日光も当たる,風通しのよい乾燥しやすそうな場所でしたが,この連休中に降った雨で全体がいい感じに湿っており,他にはヒトヨタケ類のキノコなども出ていました.今回は,2日間続けてこの場所を見にきたので,変形体から子実体のいくつかの段階を見られましたので,それを順番に並べてみました.

上の写真,黄色いかたまりがおそらくこの種類の変形体と呼ばれる段階です.黄色いところはかなり水っぽく,指で触るとびちゃっと潰れます.

小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり

黄色い塊の周辺部.奥の方が黄色い網目状に入り組んでいるように見えます.これが変形菌の変形体の特徴です.

変形菌類は,菌と言ってもキノコやカビの仲間ではなく,アメーバに近い原生動物類です.変形体とは,変形菌のアメーバっぽい時期の名前です.変形菌類の生活史は独特で,参考3などにわかりやすく書いてありますが,胞子から発芽して接合したアメーバ(変形体と呼ぶ)は,林床の腐葉土の中を動き回りながら,微生物を食べて生きています.この変形体は細胞分裂をするとき,核だけが分かれて細胞質は分かれないので1個の細胞のままでたくさんの核を持つ巨大な生物に成長します.時期になると,変形体は林床の表面に出てきて,微小なキノコ状の構造(子実体と呼ぶ)をつくり,中に胞子をつくります.子実体は動けず,たくさん集まると大きなかたまりになります.子実体をつくるために変形体が表面に出てくるところ,そしてつくられた子実体が目立つので,変形菌の観察のチャンスです.上の写真では,変形体が子実体をつくるために表面に出てきたところだと思います.

ススホコリは全世界に生息する種類とのこと(参考1).この種の変種で,キフシススホコリという種類もあるようですが区別不能です.ちなみに,上の分類は参考2によりましたが,この分類は伝統的な分類で,もっと新しい分類(たとえばアメーバ動物類(界? 門?) コノーサ亜門 変形菌下門 など)もいろいろ提唱されているようです.

小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり

こちらは,変形体のかたまりの中央部の拡大.丸い塊がたくさん集まっているように見えました.このときは,子実体が形成され始めているのかなと思いましたが,翌日この場所に来てみたら,この黄色い塊のあった場所には何もなく,1mほど離れた場所に移動していました.ですので,この黄色いつぶつぶはまだ子実体ではなく,変形体が盛り上がって移動している途中なのではないかと思います.

小合溜沿いの草地,2019年5月5日午前,晴れ

これが翌日の写真です.上の変形体のあった場所から1mほど離れています.黄色い塊が一晩の間にアメーバ運動をして移動してきたのだと思います.全体が茶色い塊になっています.これが子実体のようです.触ってみると,昨日の黄色い塊と違って,乾燥してちょっと硬いです.部分的に黄色い部分が盛り上がっていますが,これを拡大したのが下の写真.

小合溜沿いの草地,2019年5月5日午前,晴れ

この黄色い部分,見ている間にもぷくっと盛り上がってつつーッっと流れていました.細胞としてまだ生きているのかどうかわかりませんが,変形体のときの柔らかさを保っている箇所のようです.

小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり

上の写真は,ちょっと離れたところにあったかたまり.もう少し色が白っぽく,黄色い部分はありません.全体がカサカサと乾燥して硬くなっています.これが子実体に完全に変わった後なのではないかと思います.

小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり

盛り上がった部分を拡大したのがこちら.拡大すると繊維状の構造がびっしりで,網目状になっています.

小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり

そして,こちらが周辺部.やはり繊維状なのですが,菌糸のようにかつての変形体の網目が残っているようにも見えます.

小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり

薄茶色い部分を触ると,表面がパカっと取れました.その中には黄色い部分があります.黄色い部分は乾燥していて,指で触ると黄色い粉がつきました.

小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり

茶色い塊を半分に割ってみたのがこちらの写真.表面は薄茶色,その内側に黄色い層がありますが,黄色の層は薄く,内部の大部分は黒い色をしています.この黒い部分が変形菌の胞子が詰まっている部分なのではないかと思います.

小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり

上の写真は,近くにあった別の塊.色合いがもっと白っぽいのと,形はこちらのほうが小さな部分に分かれているように見えます.

小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり

こちらは,また別の塊.黒っぽいのが特徴.

小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり

拡大すると,内部の大部分はこげ茶色,表面が白と薄茶色です.おそらく子実体が形成されて時間が経つと,黄色い部分がなくなってこうなるのではないかと思います.内部の黒っぽい部分を触っても硬い感じでした.

小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり

こげ茶色の塊もありました.別種の子実体の可能性もありますが,これはパウダー状になっていて,触るとこげ茶色の粉が手についたり,舞い上がったりすることから,まさに胞子が放出されやすくなっている子実体の最終形なのではと思っています.ススホコリという和名の由来になっているのはこの段階のことかと思いました.

小合溜沿いの草地,2019年5月4日午後,くもり



参考

  1. Fuligo septica (L.) F.H.Wigg., 1780 in GBIF Secretariat (2021). GBIF Backbone Taxonomy. Checklist dataset https://doi.org/10.15468/39omei accessed via https://www.gbif.org/species/5426027 on 2022-11-23.
  2. Lado C. & Hernández-Crespo J.C. (2019). Nomen.eumycetozoa.com: An online nomenclatural information system of Eumycetozoa (version Feb 2019). In: Species 2000 & ITIS Catalogue of Life, 2019 Annual Checklist (Roskov Y., Ower G., Orrell T., Nicolson D., Bailly N., Kirk P.M., Bourgoin T., DeWalt R.E., Decock W., Nieukerken E. van, Zarucchi J., Penev L., eds.). Digital resource at www.catalogueoflife.org/annual-checklist/2019. Species 2000: Naturalis, Leiden, the Netherlands. ISSN 2405-884X.
  3. 摩訶不思議な単細胞生物〈変形菌〉に興味が尽きない! “BuNa - Bun-ichi Nature Web Magazine”(文一総合出版). (参考 2022-11-23) https://buna.info/article/2339/
  4. 子実体のつくり. “日本変形菌研究会 変形菌を知る”. (参照 2022-12-06) http://henkeikin.org/part1-2.html.
  5. . “”. (参照 ) .