基本情報

和名
ギンブナ
分類
条鰭綱 コイ目 コイ科 フナ属 (Carassius)
英名
Silver Crucian Carp
学名
Carassius langsdorfii (syn. Carassius auratus langsdorfii)
状況
千葉県レッドリスト(動物,2019)[D] 一般保護生物 (参考1)

写真とメモ

最新の写真

小合溜,2020年8月2日夕方,晴れ,スマホのカメラ

昼過ぎから小合溜で釣り.スイレンのキワを狙って,ダンゴとグルテンで釣りをしていたのですが,クチボソのアタリすらなく薄暗くなってきたところに初めてのアタリで釣れたのが写真のフナ.重さ0.53kg,全長32cm,体長体高比 2.63(体長 25cm,体高 9.5cm)です.いつものカメラを忘れて色が変ですが,大型のフナになると増えてくる茶色がかった体色の個体.

小合溜,2020年8月2日夕方,晴れ

「マブナは口が伸びるが,ヘラブナは口が伸びない」は本当かを試してみました.このフナの口は下の方に向かってかなり伸びますね.以前ヘラブナで試したときとは伸びる向きと上アゴの伸び方がかなり違います.中間的な個体もありそうな形質ですので,区別の決め手にはなりにくそうですが,典型的な個体ならかなり違うのかも.



小合溜,2019年9月29日朝,くもり

ダンゴの底釣り.この日釣れた一番大きなフナは,今まで小合溜で見たうちでもっともスマートで体高の低いフナでした.全長 30.2cm,体長体高比 3.04(標準体長23.7cm,体高7.8cm)でした.参考2で紹介されているデータによると,ギンブナの体長体高比は2.1~3.0なので,このフナがギンブナであれば,ギンブナとしてはもっとも体高の低い体型がこのフナです.体高の数値に影響するのは,魚の成長過程で頭部の後ろがどのぐらい盛り上がるか,これについては魚のもっている遺伝的な要素なのではと思いますが,同時に成長過程の栄養状態の影響,もうひとつ,お腹がどのぐらい膨らんでいるかも関係ありそうです.この個体については,体に比べて頭が大きく見え,体がかなり痩せているように感じるので,現在の栄養状態が悪いのも関係しているのかなと感じています.

一方,ギンブナとヘラブナ以外のフナ類で全長30cmになる種類は,静岡よりも西に生息するオオキンブナ,琵琶湖水系に住むニゴロブナなどありますが,オオキンブナやニゴロブナでは,体長体高比は最大3.6になるので,もっと細長い体型にもなるということですね.



小合溜,2018年8月12日朝,くもり

暑い季節なので朝の涼しいうち,小合溜でコイやフナねらいの釣り.くもりなので気温がそれほど上がらずにのんびりできました.夏になってほとんどの水面がヒシに覆われてしまい,釣りのできないエリアが増えていましたが,しばらく前からヒシが駆除され,多くの場所で水面が再び見えるようになりました.そんな場所での釣りですが,どうやらヒシで埋まったあと,コイなどの魚の回遊コースが変わってしまったらしく,魚のアタリがすごく遠い.結局釣れたのは,写真のフナ1匹の他は,アカミミガメ 3匹とクサガメ 3匹で,トホホでした.

釣れたフナは,すごくマブナらしい体型です.目が上の方についた大人っぽい顔立ち?であること,尻ビレのついている部分で体の輪郭線の角度が急に変わっていること.全長26cm,標準体長20cm,体高8.2cmで体長/体高比2.43.



小合溜(中央広場付近),2018年4月15日午後,くもり

大きなフナ(マブナ)が釣れました.釣れた魚を水浸しのビニール袋の上に置いたところです.全長39cm,体長(=標準体長;口先から尾の付け根の鱗の端,正確にはその内部にある椎骨の後端まで)32cm,体重1.0kg,体長/体高比2.4のギンブナです.図鑑などにはギンブナの最大体長は30cm程度と書いてあるものが多いと思いますので,この大きさがほぼそれに相当する大きさだと思います.ギンブナといえば,ふつう体色は銀色だと思いますが,かなり黄色っぽいというか金色の体色が印象的です.

釣れた場所はヨシの生えた岸近く,水深数十cmの浅い水底です.この時期は「乗っ込み」というのでしょうか,大きなフナが産卵のために浅いところにも入ってくる時期なのだと思います.この日は前日からの激しい風雨が昼前に止んだあとで,湿度の高い,穏やかなくもりでした.水はかなり濁っています.水面にはスイレンの葉が広がり始めていますが,それが風や波がないのに,頻繁にゆらゆらとゆれています.どうやら水中でスイレンの根元付近をごそごそしている動物?魚?がたくさんいる模様.あちこちのスイレンの葉のゆれているところにみな魚がいるとすると,かなりたくさんの魚がいるはずと,何がかかるかと期待しました.付近には巨大な魚(たぶんコイ)の黒い影なども横切ったりしてました.ただ,この日実際に釣れたのは,魚半分,カメ半分です.カメはもちろんアカミミガメ1種類のみです.カメが多いのは,しばらく竿を出していると息継ぎに水面に顔を出すカメの多さですぐに察することができました.

マブナでも,40cm近くにもなると結構引きが強くて楽しいですね.柔らかい竿でしたし,ハリスは1号だったので糸を切られる心配はなさそうで,ゆっくり寄せ.ヘラブナ用のグルテンエサ(マルキュー 凄グル)を使いましたが,この釣り方をしていればいつかヘラブナも(間違って)釣れてくれるといいなと.


ギンブナとヘラブナの区別はエラ(鰓耙)でわかる

小合溜(水元大橋),2017年7月17日午後,晴れ

小合溜で釣れたフナ.全長14cm,標準体長(口先から尾の付け根の鱗の端まで)11.3cm,体長/体高比は2.35です.エサは園内でほじくったドバミミズ(フトミミズ).参考2より,体長/体高比=2.35というのは,このフナはギンブナかゲンゴロウブナのどちらかになります.他のフナ類(キンブナ,オオキンブナ,ニゴロブナ,ナガブナなど)の体長/体高比は2.6~2.8以上(つまり体高がもっと低い)になるみたいです.でもギンブナとゲンゴロウブナの2種類の違いを厳密に判断するには,エラを解剖しないとわからないということで,このフナには犠牲になってもらって,以前から一度確認してみたかった鰓耙(さいは)数の計測をやってみたのが下の写真です.

小合溜(水元大橋),2017年7月17日午後,晴れ

エラは片側に3枚ずつありました.右側がそれを1枚ずつ取り外したところ.それぞれのエラの赤っぽいクシ状になったところが鰓弁(さいべん)と呼ばれ,水中の酸素を取り込む呼吸をする場所で,それと反対側についている白いクシ状の部分が鰓耙(さいは)です.鰓耙は水から小さな固形物をこし取るところなので,魚の食生活と関係します.ゲンゴロウブナ(ヘラブナ)は水中の植物性プランクトンを含む植物性食なので,この鰓耙をふるいとして使って水からエサをこし取るため,それ以外のフナ類よりも鰓耙数(白いクシの歯の数)が格段に多い(=鰓耙の間隔が狭い)そうです.ゲンゴロウブナを他のフナ類から確実に区別する点はこの鰓耙数ぐらいしかないそうです.釣ったフナの鰓耙数(3枚のうちの一番外側のエラで計測する)は,写真に数字を付けたように,40本(+両端隠れている部分の数本)程度でした.参考2によると,ゲンゴロウブナではこの鰓耙数は92以上,それ以外のフナで50台程度,多くとも70台とのことで,体長/体高比とあわせれば,このフナはギンブナで確定です.

フナ類の分類について

ではギンブナとは何なのか,というのが次の問題です.調べてみると,フナ類の分類は非常に複雑でした.

  • 「古典的」な分類では,
    • フナ類にはゲンゴロウブナ,ギンブナ,キンブナ,オオキンブナ,ニゴロブナ,ナガブナなどがいる…という説明がされています.
    • そのうち,ギンブナだけは特殊な種類で,遺伝子が3倍体になったメスしかおらず,オスがいないこと,ギンブナの卵は他の種類のフナの精子と接するのがきっかけで発生が始まるが,そのオスの精子はギンブナの体には入らない(受精しない),メスだけの単為生殖をする,
    という説明です.
ところが,この考えは受け入れられなくなってきています.
  • ギンブナだけで増殖することができるといっても,3倍体のメスしかいないのでは,ギンブナを分類上独立した単独の種類として認められないという議論があるそうです.
  • また,遺伝子レベルでフナを比較した論文を読んでみたら(参考3),上に挙げたような従来のフナの種類の区分と,遺伝子上の区分が異なる(ずれている)ことがわかってきたとありました.
    • 常に2倍体のゲンゴロウブナは別として,それ以外の各フナの遺伝子を調べてみたら,遺伝子の面からは各フナは3つの大きなグループに分けることができること,
    • それぞれのグループに2倍体個体と3倍体個体の両方がいること,
    • 各グループの3倍体個体はどれも従来はギンブナと呼ばれている個体であることです.
つまり,この論文によると,ギンブナはやはり独立種ではなく,「フナ類(3グループのどれでも)は,通常は2倍体だが,それが3倍体になってしまう場合があり,それをギンブナという名前で呼んでいるというわけですね.ギンブナの特徴(体高が高いこと,体が大きいこと)は,3倍体になったときのフナ共通の特徴だというわけです.ギンブナには変異が多いと言われていますが,3グループのフナの3倍体をまとめてギンブナと呼んでいたことを考えると,なるほどという感じです.また,また別の問題もあります.
  • 3グループに分けることができたフナの2倍体個体の遺伝子のグループ分けは,従来のフナの種の区分と一致していなかったそうです.ゲンゴロウブナ,ギンブナ以外のフナ類の従来の区分は,キンブナ(東北~関東に分布,15cm),オオキンブナ(静岡以西に分布,30cm),ニゴロブナ(琵琶湖水系のみ,40cm),ナガブナ(北陸,山陰,長野県諏訪湖,福井県三方五湖などに限定して生息,25cm),などですが,遺伝子レベルでは,1グループ目:キンブナ(と一部のナガブナ)グループ,2グループ目:ニゴロブナ(と一部のナガブナ)グループ,3グループ目:オオキンブナグループとなるそうです(参考3).
このことから,まず,従来ナガブナと呼んでいた種類には実はキンブナっぽいのとニゴロブナっぽいのの2種類いて,それは区別されていなかったこと,次に,キンブナっぽいナガブナとふつうのキンブナ,ニゴロブナっぽいナガブナとふつうのニゴロブナは遺伝子的には同じ種類と言っても差し支えなかったのでは,ということがわかります.ナガブナという従来の区別があまり遺伝子上は意味がなかった可能性があるということのようですね.もっとも,この3グループの遺伝子の違いというのは,別種とするほどの大きな違いではないのだそうで,もしかしたら「フナ」という1種類が,地域により3つのタイプ(亜種?)に分かれるぐらいに考えておいたほうがよいのかもしれません.なんだ,今まで素人がヘラブナ以外のフナを全部まとめてマブナって呼んでいたのが,分類上も正しかったのかと,ちょっと感慨深いです.将来フナの分類の問題に決着がついたとき,もしフナを1種にまとめることになったのなら,その種類にはぜひ「マブナ」という,ずっと親しまれてきた名前をつけてほしいですね.

世界的によく利用されている魚類のデータベース FishBase で日本産のフナ類がどう扱われているのかを見てみましたら,ゲンゴロウブナは独立種 Carassius cuvieri,キンブナ,ナガブナ,ニゴロブナ,オオキンブナはまとめて1つの種類 Carassius auratusになっていて,ギンブナは独立種 Carassius langsdorfiiとなっていました.ギンブナの扱いがいかにも暫定的っぽいですが,このページではこれを採用して学名として書いておきます.


その他の写真:たぶんギンブナ

以下は鰓耙を確認していませんが,おそらくすべてギンブナです.

小合溜の水路,2014年4月27日午後,晴れ

小合溜の水路で子どもと小物釣りをしていて,子どもが釣ったフナはプラケースにギリギリサイズの大物でした.全長を測ったら23cm.エサはアカムシの1匹がけで,クチボソ狙いの仕掛けです.体高も高くないし,受け口でもないし,アカムシで釣れたし,ギンブナに思えます.が,一応これもエラを確認したわけではないので未同定扱いで.



小合溜(みさと公園),2013年5月5日午後,晴れ

死骸の写真なので,苦手な方のために一応モザイクかけました.写真をクリックすると鮮明な画像が表示されます.

みさと公園で,小合溜に浮いていたフナの死骸を水から上げて写真を撮ってみました.あまり傷んでいませんので,死後まだあまり時間が経っていなかったのかもしれません.体が曲がっていましたが,そのまま全長を測ると26 cm.体長体高比は2.4なのでギンブナかヘラブナ.顔つきは目が上についていて受け口でもないので,よく育ったギンブナだと思います.図鑑によるとギンブナの最大体長は30cm(参考4)で,ゲンゴロウブナは40cm(参考5).魚はヒレのトゲの数で区別できることが多いので,いちおうヒレを伸ばした写真も撮ったのですが,ギンブナとゲンゴロウブナでは,ヒレのトゲの数が同じだそうで,区別の参考にはならず残念.ちゃんと区別したいときは,エラの一番外側の櫛状のところの分かれた数(鰓耙数)がポイントだそうです(参考6).

ちょっとだけフナの勉強をしたのですが難しいです.ギンブナは日本では一番よくいるフナですが,メスしかおらず単為生殖でクローンとして増えること,その際,別種のオスの精子が卵の発生のきっかけになるが受精はしないこと,メスだけしかいないため,独立した種類として認められないことになるかもしれないこと(参考4).ちなみに,キンギョはギンブナと同じ種類が元になっていると聞いたことがあったのですが,最近の説ではギンブナではなく,それと近縁の別の種類のギベリオブナに由来するのが有力になっているとか(参考7).

一方,ヘラブナというのは,ゲンゴロウブナという琵琶湖にしか住んでいない固有種と完全に同じ種類というわけではなく,改良品種であること,改良は大阪で行われたのでカワチブナという名前もあること.この改良では体高の高いものを選別したので,原種のゲンゴロウブナよりもヘラブナ(カワチブナ)のほうが体高が高いこと(参考8).

(最初の写真)水生植物園付近,2013年5月3日夕方,晴れ
(次の写真)水生植物園付近,2013年5月6日夕方,くもり

死がい.こちらはその2日前に水生植物園で見つけたフナの死がい.この日は水生植物園で2匹の死がいを見ましたが,そのうちの1匹を水中で撮った写真と,体長を測ろうと水から上げてみた写真.大きく育った個体で全長 29cmでした.これもギンブナなんでしょうか? 今の季節は,産卵が終わった頃(水元公園でもノッコミ,タタキなどの行動が見られます)だと思うのですが,産卵後に力尽きて,成熟したフナが死んでしまうなんてことがあるのかもしれません.



参考

  1. 絶滅危惧種の保護に向けて. “千葉県 環境生活部 自然保護課 生物多様性センター”. https://www.bdcchiba.jp/reddatebook_redlist.
  2. フナ類(ゲンゴロウブナとそれ以外とする分類は可能).“日本淡水魚類愛護会”. http://www.tansuigyo.net/a/link7-6.html.
  3. Yamamoto, G., Takada, M., Iguchi, K. et al. Ichthyol Res (2010) 57: 215. https://doi.org/10.1007/s10228-010-0152-8(和文要旨:http://www.fish-isj.jp/publication/research_j/IR57-3.pdf
  4. ギンブナ. “WEB魚図鑑”. http://zukan.com/fish/internal16#descriptionView.
  5. ゲンゴロウブナ. “WEB魚図鑑”. http://zukan.com/fish/internal709#descriptionView.
  6. ゲンゴロウブナ. “【琵琶湖博物館】 電子図鑑「滋賀のさかな」”. http://www.lbm.go.jp/emuseum/zukan/gyorui/gengoroubuna.html.
  7. "Prussian carp," Wikipedia, The Free Encyclopedia, https://en.wikipedia.org/wiki/Carassius_gibelio (accessed September 13, 2020).
  8. ゲンゴロウブナ(カワチブナ) | 淡水魚図鑑(在来種). “大阪府立環境農林水産総合研究所”. http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/zukan/zukan_database/tansui/2150b2c26b1c855/4050b5a0e04cf39.html.
  9. . “”. (参照 ) .