基本情報

和名
アケビコノハ
分類
節足動物門 昆虫綱 チョウ目 (ガ類) ヤガ上科 トモエガ科 (Erebidae) エグリバ亜科 Eudocima
英名
Fruit-piercing Moth
学名
Eudocima tyrannus
状況

写真とメモ

周辺の市街地、2017年11月22日午後、晴れ

アケビコノハのメスです。アケビコノハは前翅は枯れ葉にそっくりな地味な模様、後翅は黒とオレンジ色の太い帯のド派手な模様という特徴的な色合いです。普通に止まるときは前翅だけが見えるように止まり、枯れ葉に一体化して隠れていて、万が一捕食者の鳥などに見つかると、派手な後翅を見せて、相手を怯えさせる作戦ですね。黒い丸は大きな動物の目のようにも見えます。グループは違いますが、近縁のシタバガ類と同じ色合いです。

撮影場所の「周辺の市街地」というのは、水元公園の近所の自宅周辺のことなのですが、ベランダで干していた洗濯物を取り込んだら、止まっていたアケビコノハを一緒に取り込んでしまい、せっかくの綺麗な大型のガなので、ガが室内にいるうちに撮影したところです。下の写真でガが止まっている茶色い布地は自分の袖です。

アケビコノハの幼虫は、アケビの他、ムベ、ヒイラギナンテンメギなど庭に植える木も食べるので、住宅地でも見られるとのこと。この場所にはヒイラギナンテンがたくさん植えられているのでそれを食べているのかもしれません。Fruit-piercing Moth(果物に穴を開ける蛾)という英語名の由来は、成虫が果樹園に飛んできて、果物の汁を吸うので果物がダメになる果樹園の害虫であることから来ているようです。

周辺の市街地、2017年11月22日午後、晴れ

裏面から見たところ。こちら側から見ると、後翅だけでなく、足や体もみな同じ地色で、後翅の黒い模様を際立たせます。

周辺の市街地、2017年11月22日午後、晴れ

上の写真がふつうに止まるときの姿勢。枯れ葉のような前翅を屋根形にたたんで、後翅が完全に隠れています。鼻先がとんがって見えているのは、下唇鬚 かしんしゅ(Palpi パルピ)というヒゲが発達しているところです。

アケビコノハの分類を確認する際、最近数年の間にガの分類が一部変更される動きがあるのに気づきました。ヤガ上科という最も種類数の多いガのグループの中で、科の分類が変わりつつあるようです。従来ヤガ上科は、ヤガ科という最も大きなグループと、ヒトリガ科、ドクガ科、シャチホコガ科などに分けられていました。このうち、ヤガ科の遺伝子を調べて複数のグループに細分してみたら、ヤガ科の一部は残りのヤガ科とはかなり遠い関係にあり、むしろ、ヒトリガ科やドクガ科とより近いものがいることがわかったそうです。そこで、従来の(広い)ヤガ科を解体し、ヤガ科の一部とヒトリガ科、ドクガ科などをくっつくけて新たな科をつくり、残ったヤガ科を新しく(狭い)ヤガ科とする考え方が、蝶や蛾の分類をする研究者では中心になってきているみたいです。参考4はそれを主張している2012年の論文です。ただ、ネット上の分類のサイトなどではまだこの分類が一部しか反映されていないんですね。アケビコノハが含まれるエグリバ類(Calpinae)は、従来はヤガ科のエグリバ類でしたが、この分類では、ヒトリガやドクガとともに、Erebidae 科という新しい科に移されました。Erebidae 科の日本語訳がまだ定着していなようですが、従来の訳でトモエガ科としてみました。ちなみに、アケビコノハに翅の模様が似ているシタバガ類も同時に移動されるグループで、従来はヤガ科シタバガ亜科でしたが、トモエガ科トモエガ亜科になるようです。


参考

  1. アケビコノハ (2014年6月1日 06:23 UTC)-『ウィキペディア日本語版』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B1%E3%83%93%E3%82%B3%E3%83%8E%E3%83%8F
  2. アケビコノハ - 『みんなで作る日本産蛾類図鑑』 http://www.jpmoth.org/Noctuidae/Calpinae/Eudocima_tyrannus.html
  3. アケビのように苦いのか甘いのかアケビコノハを食べてみた - 『ざざむし。』 http://zazamushi.net/akebikonoha/
  4. Zahri et al.: Molecular phylogenetics of Erebidae (Lepidoptera, Noctuoidea). Systemic Entomology 37(1), 102–124, 2012. https://doi.org/10.1111%2Fj.1365-3113.2011.00607.x
  5. - 『』