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園内の街灯の下,2024年8月24日夜,くもり

シャカシャカと聞こえるクツワムシの鳴き声で満たされた園内で,街灯の下ではクツワムシが動き回る姿がたくさん見られました.近づいても鳴きやめないオスを見つけたので撮影.左右の翅を激しく動かしてこすり合わせますが,翅が開いているタイミングの写真です.



基本情報

和名
クツワムシ
分類
節足動物門 昆虫綱 バッタ目 キリギリス上科 キリギリス科 クツワムシ亜科 クツワムシ族 クツワムシ属 (Mecopoda)
英名
( in Jpn.) Kutsuwa-mushi; a Species of Katydids
学名
Mecopoda niponensis (Haan, 1843)
状況
東京都レッドリスト(本土部)2020年見直し版 東京都区部における区分:[CR] 絶滅危惧 IA 類,東京都本土部全体における区分:[EN] 絶滅危惧 IB 類 (参考1)
埼玉県レッドデータブック動物編2018(第4版)加須・中川低地における区分:[EN] 絶滅危惧 IB 類,全県における区分:[EN] 絶滅危惧 IB 類 (参考2)
千葉県レッドリスト-動物編(2019年改訂版)[C] 要保護生物 (参考3)

写真とメモ

林内の街灯,2021年8月28日夜,晴れ

クツワムシの色合いは,個体によって実にバラエティに富んでいます.この夜見つけたのは黄褐色系の地色なのですが,褐色の縞模様のあるタイプです.上と下の写真は別個体ですが,どちらも似た縞模様ありです.生物の体の縞模様の向き「縦縞」「横縞」は地面に対する上下左右方向で決めるのではなく,体の前後軸に対する方向で決めますので,この模様は横縞と呼ばれます.

林内の街灯,2021年8月28日夜,晴れ


クツワムシ♀の産卵

園内の林,2021年8月22日夜,くもり

そろそろ園内でクツワムシがたくさん現れる季節です.この夜も街灯回りをするとシュリシュリシュリという機械的な鳴き声があちこちに響いていました.そんな中,林の道端から草むらの中にライトを向けると,1mほど奥に緑色の動く姿を発見.拡大すると,まっすぐ伸びる産卵管が目立つクツワムシのメスでした.産卵管はふだんは水平からやや上方向にまっすぐ伸びていますが,このメスは産卵管を斜め45度あるいはもっと下方に向けて,後肢で体を持ち上げては産卵管を地面に刺すような動きをしていました.上の写真では,光沢のある産卵管が,後肢と同じぐらいの太さがあって,下に向いているのがわかります.

この姿は産卵中に違いないとしばらく見ていました.この動作を続けながら,だんだん林の奥へと移動していき,草の死角に入っていきました.

園内の林,2021年8月22日夜,くもり

ちょうど地面に産卵管を刺した瞬間です.あまり深くまで差し込む様子は見られず,産卵管の3分の1ほどが地面に隠れていました.

園内の林,2021年8月22日夜,くもり

ちょっと移動して別角度から.腹部がぱんぱんにふくれています.


クツワムシの幼虫

園内の林縁,2021年7月24日夜,晴れ

道端のアジサイをライトで照らしながら歩いていたら,キリギリス類の幼虫らしき褐色の虫を発見.体はかなり大型で,翅の原基が大きいのと,産卵管があるのでメスの終齢幼虫ですね.長い産卵管が目立ちますが,まっすぐやや上向きの産卵管はクツワムシの特徴です.

園内の林縁,2021年7月24日夜,晴れ

水元公園の夜が,クツワムシの鳴き声だらけになるのは8月から9月なので,これから成虫になるわけですね.クツワムシは成虫は緑色型と褐色型がいて,園内ではどちらも見つけていますが,幼虫も褐色型と緑色型があるのですね.ネット上で見つかるクツワムシの幼虫の写真は緑の体色がほとんどです.


園内がクツワムシだらけの夜

園内の街灯の下,2020年8月29日夜,くもり

園内の草地で,クツワムシの鳴き声のシャカシャカ音が響き渡っています.虫を探しながら街灯廻りをすると,この夜は街灯の下でクツワムシをたくさん見つけることができました.1本の街灯の下に何頭もいるところもあり,こんなにたくさんいたのかと思うほど.上の写真は,自分が園内で初めて見つけた緑色型です.鮮やかな緑色がきれいな個体.このオスは自分が近づいてもずっと鳴いていて,真上から鳴いているところの写真を撮れました(下の写真).

園内の街灯の下,2020年8月29日夜,くもり

鳴いているオスを真上から見たところ.左右の前翅が大きく開いていて,その間が見えます.翅の付け根付近,頭部の後ろあたりに左右の翅をこすり合わせて音を出す部分があります.

園内の街灯の下,2020年8月29日夜,くもり

上の写真は最初のとは別の個体.これも緑色型といってよいと思いますが,かなり黄色っぽい色調で,茶色い部分もあるようです.

園内の街灯の下,2020年8月29日夜,くもり

こちらは褐色型.以前撮影したことのある褐色型は,赤っぽい色が強いのと,黄色っぽい色が強いのとでしたが,これは全体が焦げ茶色ですね.クツワムシの色調はこんなに色々あるのですね.

園内の街灯の下,2020年8月29日夜,くもり

また別個体.鳴いていないオスを真上から見たところ.アオマツムシのような幅広さ.もちろん横から見ると全然違いますが.



園内の草地,2020年8月15日夜,晴れ

園内のあちこちで回転する機械がかするような音,クツワムシの鳴き声が聞こえていました.クツワムシは大抵は深いヤブの中で鳴いているようで,なかなか姿が見えません.道端の直ぐ近くの草地から聞こえているところで,そっと近寄って,やっと見つけました.以前と同じ褐色型の個体でした.褐色型とは言っても個体によって色調が違うのでしょうか,以前のは体が赤みがかった赤褐色.今度のは黄色い体をした黄褐色です.

なかなか見つからないクツワムシの姿に喜んでいましたが,この半月後,クツワムシの個体数が激増し,街灯ごとに下の草地に2,3頭みつかるようなすごい状況になるのですが,まだそのときの写真の処理までたどり着きません.



園内の草地,2017年8月25日夜,晴れ

珍しく暗くなってからの公園で街灯回り.ガがほとんど飛んでおらず,甲虫もアオドウガネがたくさん来ていたぐらいで残念.代わりに収穫があったのは,園内の道路沿いの草地で,クツワムシの大きな声がたくさん聞こえていたこと.懐中電灯で照らして虫の姿を探していき,何箇所目かでなんとか写真を撮ることができました.写真の個体は褐色型なので緑の葉の奥にいたのがわかりやすかったのでしょう.

自分にはクツワムシの声はシュリシュリシュリシュリという,故障したモーターがかすれながら回転する機械音のように聞こえます.決してよい音ではないですが,水元公園で最初に聞いた5年前(2012年)以来,なかなか姿がみつからなかったのでうれしいです.

クツワムシは東京,埼玉,千葉のどこでも絶滅危惧種ですが,園内ではある程度の個体数のクツワムシがいるようです.うれしい一方,ネット上では水元公園では昔からクツワムシがいたわけではなく,2010年?ぐらいから見られるようになったらしいことが書かれていました(参考5~7).これについては微妙な感想を持っている方もいて,同時にカンタン,ウマオイなど鳴く虫としてはメジャーな虫の声もよく聞こえるようになってきたのではないかということでした.どのサイトでもはっきりとは書かれていませんが,現在のクツワムシが放虫による人工的な生息の可能性を示唆しているものと思います.自分は2012年より前はあまり水元公園に来ていなかったので,以前いなかったのかどうか判断できないですし,放虫の情報なども聞いたことがないため,判断の基準がありません.海外の虫を国内に訪虫するのがよくないのは昔から常識になっていたと思いますが,もともと国内に生息している虫の放虫,たとえば開発や環境の悪化などによっていなくなった地域に別の地域から再導入する場合などがよくないと言われるようになったのは,遺伝子汚染(同じ種類でも地域ごとに少しずつ異なっている遺伝子が混じってしまう)の概念が出てきて以降なので,2010年ぐらいに,水元公園への鳴く虫の放虫というのもありえるのかもしれません.もちろん放虫などではなく,草刈りの方法を変えたとか,鳴く虫が増えるような方針変更があったのかもしれません.よくわかりませんが,もし放虫されるような場合でも,記録がしっかり残っていると後からいろいろ考えたり,検証したりできるのでよいですね.



参考

  1. レッドリスト・レッドデータブック・植生図. “東京都環境局”. https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/red_data_book/.
  2. 埼玉県レッドデータブックについて. “埼玉県生物多様性センター”. https://saitama-biodiversity-center-cessgis.hub.arcgis.com/pages/saitamardb.
  3. 千葉県レッドデータブック・レッドリストについて. “千葉県環境生活部自然保護課 生物多様性センター” https://www.bdcchiba.jp/reddatebook_redlist.
  4. ウィキペディアの執筆者. “クツワムシ”. ウィキペディア日本語版. 2020-08-23. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%84%E3%83%AF%E3%83%A0%E3%82%B7. (参照 2020-09-14).
  5. ついにとらえた水元公園のクツワムシの写真. “タカエコ”. http://takaeco1.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-ae69.html, (参照 2024-09-13).
  6. 鳴く虫の観察会. “emoです”. http://emochin.blog.shinobi.jp/%E3%83%9D%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0/%E9%B3%B4%E3%81%8F%E8%99%AB%E3%81%AE%E8%A6%B3%E5%AF%9F%E4%BC%9A, (参照 2024-09-13).
  7. お目見え. “5x虫虫虫”. http://wiederherstellung.blog67.fc2.com/blog-date-20140820.html, (参照 2024-09-13).
  8. . “”. , (参照 ).