基本情報

和名
キボタンタケ
分類
菌界 子嚢菌門 フンタマカビ綱 ボタンタケ目 ボタンタケ科 トリコデルマ属 (Trichoderma)
英名
(in Jpn.) Ki-botantake; A Species of Trichoderma Fungi
学名
Trichoderma citrinum, syn. Hypocrea citrina
状況

写真とメモ

園内の林,2021年11月7日午前,晴れ

ジメジメした湿気の多い日が続いていた晩秋のキノコシーズン.林内のウッドチップ置き場近くに落ちていた枯れ枝にレモン色の菌類が広がっているのを見つけました.マクカワタケ類かなと写真を撮ってみたのですが,表面を拡大しても管孔などは見えず,かわりに黒っぽい点々がびっしり並んでいる見慣れないキノコでした(下の写真).この拡大したときの独特な様子をヒントに種類を調べてみたところ,担子菌類ではなく,子嚢菌類に候補を発見.園内でみつけたことのあるアワタケヤドリなどと同じボタンタケ類に属するトリコデルマ属のようでした.「絵合わせ」ではキボタンタケという種類が有力です.

トリコデルマ属は毒性の強いので有名なカエンタケなども含まれているグループです.トリコデルマ属という分類群はもともと無性世代だけからなるカビのグループと考えられていて,一方,ボタンタケ属というキノコのグループは別にあったのですが,トリコデルマ属にも有性世代があって,それはボタンタケ属やツノタケ属という別の名前で呼ばれていただけであることがわかり,より早く名前のつけられたトリコデルマ属で名称が統一されることになったのが2013年だそうです(参考1).Hypocrea citrina という名前はトリコデルマと統一される前のボタンタケ属での名前です.

ボタンタケとツノタケの違いは,子実体の形の違いで,ボタンタケは丸いボタン型,カエンタケを含むツノタケは指状の子実体をつくります.今回見つけたのは薄く広がった子実体ですが,参考1にはキボタンタケの丸い子実体の写真も掲載されていて,これらがどういう関係になっているのかよくわかりません.

園内の林,2021年11月7日午前,晴れ

菌体の周囲は白い菌糸が繊維状になっていて,大部分はレモンイエローです.この色から硫黄色という言葉を思いつき,最初に見つけた種類はトリコデルマ・スルプレウム(Trichoderma sulphureum,sulphureum は硫黄色の,淡黄色の,の意味)という種類だったのですが,この種類は日本や東アジアには分布の記録がなかったので(参考3),似た種類を探してキボタンタケにたどり着きました.外見はよく似ています.キボタンタケのほうが色が少し薄いようです.

園内の林,2021年11月7日午前,晴れ

拡大すると小さな黒っぽい点がびっしりあります.穴になっているようです.



参考

  1. “トリコデルマ”. ウィキペディア日本語版. 2019-03-31. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%83%9E, (参照 2022-01-03).
  2. Trichoderma citrinum (Pers.) Jaklitsch, W.Gams & Voglmayr in GBIF Secretariat (2021). GBIF Backbone Taxonomy. accessed via https://www.gbif.org/species/7543633 on 2022-01-03.
  3. Trichoderma sulphureum (Schwein.) Jaklitsch & Voglmayr in GBIF Secretariat (2021). GBIF Backbone Taxonomy. accessed via https://www.gbif.org/species/8341624 on 2022-01-03.
  4. : In "".Retrieved from
  5. . “”. (参照 ) .