基本情報

和名
ヒクイナ
分類
鳥綱 ツル目 クイナ科 ヒメクイナ属 (Zapornia)
英名
Ruddy-breasted Crake
学名
Zapornia fusca, syn. Porzana fusca(種として),
Zapornia fusca erythrothorax (東アジア亜種として)
状況
環境省レッドリスト2020[NT] 準絶滅危惧 (参考1)
東京都レッドリスト(本土部)2020年見直し版 東京都区部における区分:[CR] 絶滅危惧 IA 類,東京都本土部全体における区分:[CR] 絶滅危惧 IA 類 (参考2)
埼玉県レッドデータブック動物編2018(第4版) <繁殖鳥> 加須・中川低地における区分:[CR] 絶滅危惧 IA 類,全県における区分:[CR] 絶滅危惧 IA 類 (参考3)
千葉県レッドリスト−動物編(2019年改訂版)[A] 最重要保護生物 (参考4)
IUCN レッドリスト 2023-1[LC] Least Concern ver 3.1(絶滅のおそれなし), Pop. trend decreasing (個体数減少傾向) (参考5)

写真とメモ

小合溜沿いのヨシ原,2018年2月13日朝,晴れ

公園のヨシ原にヒクイナが来ている情報は12月からネット上で見つけており,それ以降,公園を散歩するときはいつもヨシ原に寄ってみていましたが,姿を見られたのはこの日以前は1回のみ.それもヨシ原の通路をすばやく飛んで渡っていったのみで,目視でかろうじて種類が分かる程度でした.ヒクイナが見られる頻度は低いので,満足な写真がなかなか撮れない方とか,自分と同じような方にじっくり見てもいない人などもまだいると見えて,2月に入っても,休日はいつもヒクイナ目当ての人がたくさん通路にいます.そんな中,この日は,はじめて土日休日以外の平日にヨシ原に来てみました.平日の朝8時にはヒクイナ待ちは自分だけ,たまに犬の散歩やウォーキングの人が通る程度.風がなくポカポカした日差しの日で,シーンとした中に,小鳥がヨシで虫をとるパキパキ,カサカサという音が響きます.ヨシ原の奥の方からはケッケッケッというクイナ類の声が聞こえたりして期待が高まります.8時半過ぎでしょうか,自分がじっと立っていたのはヨシ原の中央の通路の交わるところでしたが,自分の位置から一番近いヨシのすき間に黒い小さな影がチラチラ動いており,その姿はすぐにヨシの外まで出てきました.写真はその時の写真です.盛んに地面をついばみながら,ヨシ原のフチに沿ってしばらくウロウロ移動した後,通路を横切り,また別の場所から出てきては通路を横切る,という具合で10分以上の間,1頭のヒクイナがヨシ原をあっちこっちと移動するのをゆっくり観察できました.

写真でしか見たことがなかったヒクイナの実物は,クイナよりもかなり小さく,歩幅も小さくちょこちょこした動きですね.距離が近いので自分のコンデジでも撮れる距離だったのもうれしかったのですが,見られた時間が長かったので,行動パターンみたいなものが読み取れたのがよかったです.行動パターンというのは,ヨシの刈ってある通路部分を越えていくときのヒクイナのやり方です.あるヤブAから別のヤブBに移動する際には,ヤブAの周囲に出てきてヤブAのフチに沿ってしばらく歩きながら,通路を渡っても危険はないかをじっくり見極めるのではないかということ,その後次第にヤブAのフチを離れ,通路を渡っていきますが,ヤブAから離れるに従って歩く速さがアップし,走り出し,最後は翼をちょっと広げて低く飛びます.着地点はヤブBのすぐ外で,そこからヤブBに一瞬で走り込んで移動完了.周囲が静かで安全だとヒクイナが走り出すまでにゆっくり歩く距離が長く,通路に人が多いなど安心できないときはヤブから出た瞬間から走り出すのかなと想像します.平日朝に観察に来たメリットは,ヤブに沿って歩き,通路をゆっくり歩くのを観察できたことだと思います.ちょうどヒクイナが出たときにはもう1人観察する方が増えていて2人で並んで見たのですが,休日でも,観察者が1箇所に集まってじっとしていれば,おそらく同様の様子が観察しやすいでしょうが,通路をぶらぶら移動し続ける観察者がいたり,通路のあちらこちらに観察者がぽつりぽつりと点在していて,ヨシ原のフチに安心な空間が確保できない場合には,最初のフチ歩きで様子をうかがう段階で警戒してヤブに戻ってしまうのかなと思います.ちなみに,ヒクイナが出てきた位置は,ケッケッケッという鳴き声が聞こえたのとは全く別の方角でした.鳴き声は参考にならなそうです.ヒクイナが複数頭いるのかもしれませんが,鳴き声はヒクイナではなくてクイナなのかもしれません.

小合溜沿いのヨシ原,2018年2月13日朝,晴れ

ヨシ原の別のところから顔を出したところ.ここは中央のあぜ道に面したところで,ここでもしばらくフチ歩きをしていました.

小合溜沿いのヨシ原,2018年2月13日朝,晴れ

また別の場所で.フチを歩いていたのが,中央のあぜ道を渡る際,次第にフチを離れて進み始めるところ.頭部にちょっと日が当たっているので赤っぽい顔の色と,目が赤いのが若干見えています.

小合溜沿いのヨシ原,2018年2月13日朝,晴れ

ヨシ原のあぜ道の横断中.通路の中央付近を越えて走り出そうというタイミング.あぜ道に登る斜面では首を長く伸ばしながら歩いて登りましたが,道を越えるところから向かいのヤブまでは飛んで移動.

さて,ヒクイナは環境省のレッドリストにも載っている絶滅危惧種なんですね.もともとは日本に夏に繁殖に来る鳥で,冬はもっと南方に移動する鳥とのことですが,近年は日本の暖地で越冬することも観察されているそうです(参考6).各地で絶滅危惧種になっているのは,繁殖に来るのが減ったという意味で,冬に観察されるヒクイナは,絶滅危惧種の指定対象には入っていないおまけ的な位置づけなのではないかと思います.ヒクイナの色は,ここで観察できる冬羽は顔と胸部が暗赤褐色ですが,夏羽の色はもっと鮮やかな赤い色とのこと.冬の色も渋くていい色ですが.



参考

  1. レッドデータブック・レッドリスト. “生物情報 収集・提供システム いきものログ” (環境省生物多様性センター). https://ikilog.biodic.go.jp/Rdb/booklist.
  2. レッドリスト・レッドデータブック・植生図. “東京都環境局”. https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/red_data_book/.
  3. 埼玉県レッドデータブックについて. “埼玉県生物多様性センター”. https://saitama-biodiversity-center-cessgis.hub.arcgis.com/pages/saitamardb.
  4. 千葉県レッドデータブック・レッドリストについて. “千葉県環境生活部自然保護課 生物多様性センター” https://www.bdcchiba.jp/reddatebook_redlist.
  5. BirdLife International. 2016. Zapornia fusca. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T22692699A93365192. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T22692699A93365192.en. Accessed on 01 January 2024.
  6. ヒクイナはどこまで越冬している? 冬のヒクイナを探してください. “バードリサーチニュース”. https://db3.bird-research.jp/news/201512-no5/, (参照 2024-01-01).
  7. . “”. , (参照 ).