タヌキの疥癬症について

園内で,毛の抜けたタヌキをみかけることが増え,死んだ個体も見かけます.ホンドタヌキのページから,ちょっとショッキングな“病気”のタヌキの写真と死んだタヌキの写真をこのページに隔離しました.

毛の抜けたタヌキの情報をネット上で探して,参考1,2をみつけました.タヌキが疥癬症(かいせんしょう)になると体の毛が抜けて,毛の生えていない謎の動物になります.イヌの疥癬症を引き起こすことが知られるセンコウヒゼンダニというダニが原因だそうです.近年,野生動物でこのような疥癬症がよく見られるようになってきて,イヌに疥癬症を起こすセンコウヒゼンダニがタヌキやキツネに疥癬症を引き起こし,ネコの疥癬症を引き起こすショウセンコウヒゼンダニはアライグマやハクビシンなどへの感染例が知られているとのこと.参考1によると,これら野生動物のダニがペットから広がったのか,野生動物の間で広がったのかはわかっていないそうです.ただ,感染が増えた背景として人間社会に隣接する動物の生息環境が狭くなり,野生動物の生息密度が上がっていること,ペットのイヌとの生息環境が重なることなどが関係しているのではとのことです.


最新の写真

小合溜沿いの草地,2024年3月3日午前,晴れ

やっと冬が終わって,朝も少し暖かい日が増えてきましたが,草地に疥癬症のタヌキの死体を発見.病気の体では寒い冬を越せなかったようです.小さめの体,若いタヌキでしょうか.毛が抜けているのは疥癬症の症状ですが,毛がまだ残っているのは頭部と尾だけでした.タヌキをじっくり観察する機会はあまりないので,写真を撮ってみました.

小合溜沿いの草地,2024年3月3日午前,晴れ

頭部の拡大.眼球はレンズを残してなくなっていましたが,口の周りの筋肉などは残っているので,まだそれほど日数が経過していないように見えました.

小合溜沿いの草地,2024年3月3日午前,晴れ

尾の先端部分には黒い毛が生えています.



小合溜沿いの草地,2024年3月17日午前,くもり

最初にこのタヌキを見つけてから2週間後にまた来てみました.表面はあまり変化していないように見えますが,臭いが強くなっていて,体の下面には双翅類の幼虫がびっしりでしたが,その写真は割愛.

頭部では,口の周りの組織の変性が進んで縮んだようで,歯が見えるようになりました.タヌキの歯式は3-1-4-2/3-1-4-3=42,つまり片側に切歯3,犬歯1,小臼歯4,大臼歯は上2/下3とのこと(参考3).写真で見ると上下の犬歯が非常に大きくてわかりやすくて,その右に切歯2対ぐらい,左に小臼歯3対ぐらい見えています.切歯,小臼歯は,ヒトだとそれぞれ四角い前歯,噛み合わせが平らな奥歯で特徴的な形をしていますが,イヌ科の歯ではどちらも尖っていますね.切歯の形は犬歯とあまり違わないように見えますが,大きさがかなり小さいです.肉食の哺乳類では奥歯も尖っていて,肉を切り裂くのに非常に重要な働きをしていて,別名 裂肉歯というようですが,タヌキでも奥歯が尖っているのがよくわかります.

小合溜沿いの草地,2024年3月17日午前,くもり

前肢の爪と肉球.爪も肉球も暗褐色.タヌキの肉球はふっくらと発達していますが,後肢よりも前肢のほうが発達して,横に広いように見えます.

小合溜沿いの草地,2024年3月17日午前,くもり

そして後肢の爪と肉球.後肢の肉球は幅が狭くて,縦方向に並んでいます.



写真とメモ

圃場の草地,2022年4月24日午前,くもり

春になって初めてタヌキを目撃しました.昨年12月に疥癬で毛の抜けたタヌキを見ましたが,今回も毛がありません.病気の影響で体が弱っているのと毛が抜けた寒さのためとあわせて,春になる前に死んでしまうのかと思っていましたが,無事に冬を越せた個体もいたようで何よりです.この日見たのは2頭です.希望的には,これから夏にかけて気温が上昇すると体調も回復し,疥癬を克服できる可能性もありそうに思いますので,今後も観察できればとは思います.

園内の林,2022年4月24日午前,くもり

園内を移動すると,さっき圃場でみたタヌキ2頭が,バードサンクチュアリの近くの土砂や伐採材の山のところに移動してきていました.穴を掘ってミミズでも食べているところに見えます.毛がなくて硬くなった皮膚は相変わらず痛々しいところ.



バードサンクチュアリ,2021年12月22日朝,くもり

またタヌキを見かけましたが,前回のタヌキはどれも毛がかなりなくなっていましたが,今度のタヌキは体のほとんどがまだ冬毛に覆われています.ということは前回の3頭と今回の2頭は別個体なので,園内には計5頭?あるいはそれ以上のタヌキがいるのでしょう.理由はわかりませんが,園内のタヌキが今年急に増えたように感じます.タヌキの移動できる範囲を考えると江戸川河川敷方面から移動してきたのでしょうが,たとえば,子連れのタヌキ親子が一緒に園内に来て大きくなった子どもたちが別行動を始めたとか? 江戸川でタヌキが住めなくなるような何か異変があって,たくさんのタヌキがばらばらに公園に入ってきたとか?を想像しました.いずれにしても,園内に来てから疥癬症になったのは間違いなさそうです.



バードサンクチュアリ,2021年12月16日午前,晴れ

体の毛が抜けて荒れた皮膚がむき出しになったタヌキが3頭,バードサンクチュアリの観察窓の向こうに来ていました.つい1ヶ月前にはこの場所にフサフサの冬毛のタヌキがいましたが,それと同じ個体なのかははっきりしません.写真ではまだ毛の残っている場所もあるので,今まさに抜け毛が進行中なのかと思います.

ペットなら薬を飲んでダニを駆除して手当をするところだと思いますが,野生のタヌキはそうはいかず,毛のないまま冬を迎えて寒さで衰弱して死んでしまうとの予想.感染してしまった以上は,これはしょうがないですね.


参考

  1. 野生タヌキの疥癬症について. “公益社団法人日本獣医学会 Q&A”. https://www.jsvetsci.jp/10_Q&A/w20090106.html, (参照 2022-04-27).
  2. 毛のないタヌキに関する注意喚起について. “茨城県阿見町ホームページ”. https://www.town.ami.lg.jp/0000007715.html, (参照 2024-03-18).
  3. 畑:エゾタヌキの歯数および歯根の変化について (PDF). 歯基礎誌 14(1): 118-122, 1972. https://www.jstage.jst.go.jp/article/joralbiosci1965/14/1/14_1_118/_pdf.
  4. . “”. , (参照 ).